普段あまり見ることの出来ない、映画館を支える社員の仕事に焦点を当てて、その仕事の内容と魅力を紹介してゆく【映画館で働くということ。】。
前回の、基礎知識編に続き今回は”実際に社員が働く現場”に目を向けて、早番の1日の仕事内容をご紹介致します。
大手シネコンのサイトには「採用情報ページ」があり、そこに”マネージャーの1日”や”マネージャーの仕事”という内容で掲載されているので、そちらも参考にしてみてください。アレは求人募集用なので、比較的美しく描かれています…
↓まだ基礎知識編を読んでいない方は、先にコチラからご覧ください。↓
映画館の朝は早い
映画館のオープン時間は上映時間によって様々ですが、夏休み・春休みなどの大型連休で動員が見込める期間は、早ければ7時30分や8時にはオープンします。
早番のマネージャーは、最低でもオープンの1時間前には出勤します。イベントや特別な対応が必要な場合は、もっと早いです。
ちなみに、ぼくが一番早かったのは朝の4時30分出勤でした。もはや、太陽も出ていませんでしたね…
忙しい劇場だと、こんな時間に出勤すると前日の遅番が仕事をしている事もしばしば…。映画館の裏側は24時間営業なんです。
オープン前の仕事
劇場に到着して、従業員用の入口から館内に入ります。
ここからオープンまでの1時間で、色々な準備を行い、問題なく映画館をオープンさせるのが早番の最大の仕事と言えます。
まずは、このオープンまでにマネージャーがどんな仕事をしているか見ていきましょう。
まずはセキュリティの解除
真っ暗な館内に入る前に、まず1番最初に行うのがセキュリティの解除です。
映画館はとても広く、商品や資材の量も多いので、当然セキュリティもしっかりしています。このセキュリティの解除から早番の1日が始まります。
電気・電源のON
セキュリティを解除したら、オフィスに上がります。荷物を置いて、出勤。落ち着く間もなく、次の仕事に取り掛かります。
次の仕事は、電気や電源をONにする事です。映画館で「電気を点ける」「電源をONにする」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、シアター内の照明や映写機の立ち上げはまだ先です。
ここでの作業は、“立ち上げまでに時間が必要なものの電源をONにする”という事です。
例えば、売店で使用する機器なんかは、温まってないと使えないものが多いので、それらの電源をONにしたり、ロビーの大画面に映像を投影しているプロジェクターなんかも事前に電源を入れておく必要があります。
これらを先に立ち上げに行き、その帰りにロビーの電気なども点けます。
前日の数字と引き継ぎ確認
電気・電源のONを終え、オフィスに戻ってきたら、前日の遅番が締めて出力した各種帳票にミスがないかダブルチェックします。
それと同時に、前日からの引き継ぎ事項がないか連絡ノートなどを確認しておきます。
映画館の売上は色々な約束事が多く、ミスがあると多方面に迷惑を掛けてしまう事もあるので、遅番で行った業務を早番でもダブルチェックする事が非常に重要なんです。
現場の準備
ここまでやったら、あとはオープンに向けた現場の準備です。
このあと出勤してくるスタッフの為に、レジのお金や現場で使う管理表などのアイテムを準備します。
と、これ以上細かく書けないので、簡単に書きましたが…オープン前の仕事で1番難しく、1番時間が掛かるのがこの仕事です。慣れるまでは、これだけで30分以上掛かっちゃう事もあります。
アルバイトスタッフが出勤
オープン準備をしていると、徐々にアルバイトスタッフが出勤してきます。
アルバイトスタッフは、その日の状況に応じてシフトで出勤時間が管理されていますが、だいたいオープンの30分前には出勤してくる事が多いです。
ここからは、アルバイトが現場でオープン準備を始めるわけですが、その間もマネージャーはやる事がたくさんあります。
メールと当日のスケジュール確認
まずは、これですね。
劇場宛には日々たくさんのメールが送られてきます。お客様からのお問い合わせメールはもちろん、本部や配給、取引先など内容は様々です。
自分が出勤していなかった間のメールを見返す事は必須で、基本的には劇場にいる社員が都度対応しているのですが、担当が自分であったり、全体連絡で自分も把握しておかないといけないような内容のものも多く含まれます。
それと同時に、当日のスケジュールを確認します。
混雑しそうな時間帯があるか。特別対応があるか。事務作業をどのタイミングでやるか。などなど、1日の劇場の流れを確認します。
映写機とシアター内の準備
出勤してきたアルバイトスタッフの中には、映写機の準備をするスタッフもいます。
そのスタッフが各シアターの映写機の準備と、館内照明のONをするわけですが、この準備が問題ないかマネージャーが確認します。
ほとんどの映画館がデジタル映写機を使い、オートメーションで上映が行われるので、営業時間中は基本的に映写室にスタッフはいません。
つまり、ここの準備でミスがあると、上映トラブルに直結してしまう可能性が高いのです。マネージャーのチェックが、最初で最後の砦なわけです。
ちなみに、劇場によってはマネージャーが映写機を立ち上げる場合もありますが、ぼくがいた劇場は全てスタッフが担当していました。
朝礼
映写機の準備が無事に終わったら、各セクションの準備が終わっている事を確認し、朝礼を行います。
朝礼自体は、どんなところにもある一般的なもので、内容も連絡事項が中心の、いわゆる一般的な朝礼です。
「いらっしゃいませ!」から始まるような、接客●大用語みたいなのがある劇場は、それを唱和してオープンを迎えます。
余談ですが、入社したての時はこの朝礼が結構緊張するものです。それなりの人数の前で話す事になりますので、苦手な人は慣れておいた方が良いですね。
いざオープン
ここまでの作業を基本的には1時間で終わらせるわけですが、最初のうちは当然1時間では終わりません。先輩の社員と一緒に何度も繰り返し、身体に染み込ませていきます。
そんな準備をすべて終えたら、いよいよ映画館がオープンします。ここからは開場した後の動きを見ていきましょう。
まずは開けに行く
冒頭でお話したように、映画館のオープンは一般的なお店と比べて、かなり早いです。
ショピングセンターなどに入っている劇場は、映画館だけが先にオープンするので、映画館専用の入口をマネージャーが開けに行き、そのままお客様をご案内します。
これがオープン時の1番最初の仕事です。
お出迎え
専用の入口を開け、お客様を劇場まで誘導してきたら、そのまま今度は劇場の入口でお客様をお出迎えします。
朝からご来場頂くお客様にごあいさつをするわけですね。
この辺は劇場によってルールが違う事も多いので、あまり深く書きませんが、大手デパートなんかで開店時の挨拶をしているようなものです。
館内を見回りオフィスへ
お出迎えのごあいさつも落ち着いたところで、グルっと館内を見回ります。
それぞれのセクションに問題はないか、シアター内はお客様が安心して映画を鑑賞できる状態になっているか。現場に問題がない事を確認して、オフィスに上がってきます。
営業時間中
オープン後、現場に問題がない事を角確認してきたらオフィスに戻ります。
各シアターの最初の上映が無事に始まったくらいで、ようやく一息つくわけですが、営業時間中はどんな動きになっているか見てみましょう。
現場の運営に最注力
劇場内には至るところにカメラがあり、オフィスから全ての状況を把握できるようになっています。
マネージャーの最大の仕事は「劇場を円滑に運営すること」です。お客様の動き、スタッフの動きを把握して、時にはスタッフに指示を出します。
また、しっかりと休憩は取れているか、次の混雑に向けた準備は出来ているか、など劇場の裏も表もコントロールする力が求められます。
基本はデスクワーク
劇場の様子を把握しながら、特にイレギュラーがない限りはオフィスでデスクワークです。
自分のセクションの業務の他にも、都度メールやお電話での問い合わせに対応したり、曜日ごとの業務を行ったりします。
ヘルプ対応
劇場には、その日の動員予想に見合った人数のアルバイトスタッフが出勤しています。
逆に言うと、その予想を上回ると現場の人数では対応できなくなり、いわゆる”混雑”が発生します。
混雑しているセクションに、他のセクションからヘルプに行って解消できれば良いんですが、それで混雑が解消しない場合はマネージャーの出番です。
実際に現場に降りて、必要に応じてレジを開けて対応したり、入場アナウンスを流したり、アルバイトスタッフの一員となり、円滑な劇場運営が出来るようにヘルプに入ります。
早番スタッフと遅番スタッフの入れ替え
そうこうしているうちに、遅番スタッフが出勤してくる時間になります。
朝準備したように、ここで遅番のアルバイトスタッフが現場で使うレジのお金などを用意してあげます。
遅番スタッフにも朝礼(夕礼)を行い、現場のスタッフが早番と遅番で入れ替わります。
レジ金の確認
早番スタッフと遅番スタッフが入れ替わったら、ここで最後の大仕事が待っています。
それがレジ金の確認です。
早番で使ったレジに違算が出ていないか、またチケット窓口で預かった前売券などに打ち間違いがないか、レジの確認を行います。
ほとんどの場合、違算なしで終わるのですが、新人スタッフさんや混雑した日などは、違算・打ち間違いが発生する場合もあります。
ミスをしてしまったスタッフに、再発防止を促し指導するのもマネージャーの大切な仕事です。
早番の終わり
ここまでの業務を終えれば、早番の業務終了は近いです。この時点で、だいたい17時くらいになってるものと思います。
最後に退勤するまでに、やるべき業務をご紹介しておきます。
社員の入れ替え
アルバイトスタッフと同じように、社員同士も早番と遅番で入れ替えがあります。
場合によっては、「中番」というシフトも存在しますが、「中番」は早番と遅番の繋ぎで、混雑対応要員でもあったりするので深くは触れません。
遅番に引き継ぎを行い、自分の業務が終わっていれば退勤です。お疲れ様でした!
基本は時間制だが…
映画館とはいえ、一般のサラリーマンと同じで、1日の労働時間は決まっています。
だいたい、基本「9時間拘束」くらいだと思うので、この時間が来たら”帰っても良い”事にはなっています。
ただし、これは日本人の性格と言いますか、風習と言いますが…少なくとも「早番のレジ金確認」が終わるまでは帰れない事が多いです。
例えば、朝7時に出勤した場合。16時が定時になるので、帰ろうと思えば帰れます。
ですが、この時間はちょうど早番と遅番の入れ替えの時間になる事が多く、そこからスタッフがお金を上げて来て…結局17時は過ぎますね。
さらに、劇場が混雑していたり、イレギュラー対応があれば更に…という事になります。サービス業なので仕方ないんですけどね!
最後に
【映画館で働くということ。】今回は、早番の1日を業務内容と合わせて、ご紹介してきました。
普段、あまり表舞台に出る事がないマネージャーの動きはこんな感じになっています。
今回ご紹介したのは、あくまでも必要最低限の基本業務です。イレギュラー対応があったり、自セクションの業務があったり、マネージャーは裏で仕事に追われているんです。
ちなみに、マネージャーに決まった休憩時間はありません。お昼ご飯は劇場の状況を見て、自分のデスクで食べます。買ってくる事はあっても、外で食べる事はほぼありません。
この辺りは、同じサービス業でも少し違うかもしれませんね。
映画館で働こうとしている方や、そこまで考えてなくても興味がある方の参考になっていれば幸いです。
1人でも多くの方に、映画館の仕事の魅力をお伝え出来ますように。
↓続いて、「遅番の1日編」もぜひお読みください。↓