普段あまり見ることの出来ない、映画館を支える社員の仕事に焦点を当てて、その仕事の内容と魅力を紹介してゆく【映画館で働くということ。】。
前回の、早番の1日編に続き今回は”遅番の仕事”に目を向けて、遅番で出勤した1日の仕事内容をご紹介致します。
↓前回の「早番の1日編」はコチラ↓
ちなみに、「中番」というシフトも存在しますが、これは早番と遅番のつなぎ要員であり、かつ現場混雑等の対応要員になることが多く、中番しかやらない仕事というのが、ほとんの存在しないので割愛します。
夕方から勤務開始
映画館はご存知の通り”レイトショー”という上映回が存在します。劇場によっては終了時刻が24時を超える…なんてこともザラにあります。
当然、社員は全ての上映が無事に終わった事を見届けてクローズする必要があり、逆算すると勤務開始は夕方からになります。
出勤は16時くらいから
出勤時間は劇場のルールや、当日の上映スケジュール、混雑状況によって変わってきますが、16時くらいから遅番が出勤する劇場が多いです。拘束9時間と考えると、25時が定時という事ですね。
動いている電車に乗り込むような感覚
映画館に限らず、早番・遅番というシフト制で運営されているお店は同じ事が言えると思いますが、既に営業開始している劇場に遅番で出勤するのは、動いている電車に乗り込むような感覚です。最初のうちは、これに慣れるのに時間が掛かった記憶があります。
午前中にこんな事があった、今日の状況はこんな感じ、もう少ししたら●●が始まる…などなど、息つく暇もなく情報が飛んできます。最初からエンジン全開でいきましょう!
遅番の最初の業務
そんな状況の中で出勤する遅番マネージャー。まず最初の業務は「状況の把握」です。
イレギュラーがなければ、どうって事ないんですが…”何か”あった日の遅番や、休み明けの遅番だと結構ここで時間を取られます…正直、出勤してすぐって頭回ってないですもんね。
レジ入れ替えの手伝い
引き継ぎなどを始める前に、だいたいレジ入れ替えを手伝う事になります。
というのも、遅番マネージャーが出勤する時間帯は、まさに早番と遅番で現場のレジを入れ替える時間帯なので、ミスがないかの確認作業や入力作業を早番マネージャーと一緒に行います。
早番からの引き継ぎ
レジ入れ替えが落ち着いたら、ようやく引き継ぎです。
とは言え、イレギュラーな事がない場合は「いつも通りです。」みたいな簡単な引き継ぎで終わりです。むしろ、引き継ぎがない場合もあります。
逆に、引き継ぎのタイミングで、早番から夜の間にやっておいてほしい業務などのお願いをされる事もあります。
メールチェック
遅番に限らずですが、出勤したらまずはメールチェック。他の記事でもご紹介していますが、これはマネージャーの鉄則です。
営業時間中は早番と同じ
引き継ぎやメールチェックが終わったら、日常業務に入るわけですが、営業時間中は基本的に早番マネージャーと同じで「現場の円滑な運営」「自セクションの業務」などを行います。
詳細はこちらでご紹介しているので、ここでは割愛します。
レイトショーがスタート
そうこうしているうちに、各シアターでレイトショーの上映が始まります。いわゆる、その日の最後の上映回ですね。
ここからは、少しずつ劇場クローズに向けての業務を進めていく事になります。
レジを上げる
レイトショーの上映が始まって一定時間経過すると、当日のチケット販売が終了になります。
このタイミングでチケット窓口とコンセッションのレジはクローズになるので、アルバイトスタッフがレジを上げてきます。早番の時と同様に、レジにミスがない事を確認して、当日の売上が確定されます。
成績報告
レジが上がり、当日の売上が確定したところで、劇場の成績を各方面に報告します。
1つ目の報告先は配給会社です。
配給会社に、「今日はうちの劇場で、これくらいお客様が入られて、これくらいの興行収入でした。」と報告します。配給会社によって報告の方法は違いますが、動員と興行収入を報告しています。
2つ目は本社です。
全国展開しているような大きなチェーンだと、「うちの系列でどれくらい」という数字を握っておく必要があるため、日々全国の劇場の数字を集計しています。そのため、本社へも各劇場が成績の方向を行います。
3つ目は近隣のライバル劇場。
意外に思えるかもしれませんが、近隣の劇場とも数字の共有を行います。(劇場による)
もちろん、ライバル劇場の数字を把握して、いかにうちの劇場にお客様を呼ぶかの戦略を立てる事が目的ですが、お互い同じ事を考えているはずなので、様子を見ながら送りあってる感じです。
片付けチェック
レジを上げたアルバイトスタッフは、もう一度現場に戻って後片付けをします。
特にコンセッションは、洗い物や翌日の仕込みがあり、遅くまで掛かる時もありますが、チケット窓口とコンセッションの後片付けと翌日の準備が出来ているか、最後はマネージャーが確認します。
フロア以外のスタッフは退勤
後片付けのチェックが終われば、そのセクションのアルバイトスタッフは退勤です。
タイムカードを切って、着替えて「お疲れ様でしたー!」。お客様が、レイトショーを観終わってシアターから出てくる時には、フロアスタッフしか残っていないという事なんですね。
この時点で、だいたい22時30分とか23時前くらいです。
レイトショー上映終了
チケット窓口とコンセッションのアルバイトスタッフが退勤すると、レイトショーの上映も徐々に終わり始めます。
全てのシアターで上映が終了したら、最後の大仕事です。
現場の最終チェック
この時点で残っているフロアスタッフと一緒に現場の最終チェックを行います。
ロビーやトイレ、シアター内にお客様は残っていないかを全て見て回り、問題がなければ電気を消します。
恐らく、みなさんは経験ないと思うのですが…映画館は窓1つないので、電気を落とすと一瞬で暗闇です。この上ない暗闇です。(本当に怖いです…)
なので、間違ってもお客様がシアター内に残っている状態で電気を消してしなわないように最終チェックをして回ります。
落とし物の確認
現場の最終チェックが終わったあと、その日の落とし物が正しく処理されているか確認します。
劇場での拾得物は、物によって色々とルールがあり、トラブルも多いので毎日確認しているわけです。
映写機もシャットダウン
落とし物の確認をしている間に、他のスタッフが映写機の電源を落としてくれます。
劇場によっては、これがマネージャーの業務になる場合もありますが、立ち上げより簡単で時間もかからないので、ここはサクッと終われるはずです。
本当の最終チェックと最後の業務
フロアスタッフも退勤して、いよいよ劇場に残っているのは自分1人になります。
遅番の自分が最後の砦なので、最終チェックや翌日の準備など、遅番の使命とも言える「明日への橋渡し」が問題なく出来ているか確認していきます。
本当に誰もいないか
怖い話ではありません。
現場はアルバイトスタッフと一緒に確認しましたが、そのスタッフたちがロッカールームなどで楽しく話してたりする場合があります。
これに気付けない事はほとんどありませんが、このあとセキュリティを掛けて退出するので、もし見逃したら一大事です。劇場の裏側も含めて、本当の意味での最終チェックを行います。
明日は大丈夫か
2度目ですが、遅番マネージャーは最後の砦です。明日の準備で抜けているものに、このタイミングで気付ければ対応出来ます。
オープンの1時間前に出勤してくる早番では、気付いたとしても対応する時間がありません。特に映写関連の抜け漏れは大きなトラブルに直結するので、個人的には重点的に見ていました。
いずれにしても、劇場全体を広い視野で見て、「明日は大丈夫か」を自分の中でもう一度確認する事が大切です。
自分の仕事
映画館の1日を通して、正直この”自分だけがいる時間帯”が最も仕事の捗る時間帯です。
営業時間中は、現場の運営や電話対応などに追われる事が多いので、個人的にはこの時間に残業してでも自分の業務を終わらせるようにしてました。
セキュリティ
翌日への引き継ぎなども含めて、ここまでの業務を全て終えれば遅番の仕事は終わりです。事務所の電源なども全て落として、セキュリティを掛けて退勤します。
自分の仕事が貯まってなくて、翌日の準備も特別ない場合は、この時点で25時です。
最後に
【映画館で働くということ。】今回は前回の「早番の1日編」に続き、遅番の1日の流れを業務内容と合わせてご紹介しました。
はっきり言うと、早番より遅番の方が責任が重いです。早番で起きたミスは、なんとか遅番で巻き返す事が出来ますが、遅番のミスは翌日の劇場運営に大きなダメージを与えます。
なので、入社してすぐに遅番を任される事はありません。早番で現場の運営を身に付けたうえで、遅番に入る事が多いでしょう。
ちなみに、試写業務も遅番の仕事です。公開前に新作を観て、映像・音響のチェックをする業務ですね。
フィルムの時代は、遅番の業務を全て終えた25時から、2時間の映画を全編観る必要がありましたが、デジタル映写機の導入でポイントを押さえた試写が可能になったのは、遅番にとっては嬉しい限りです。
ぼくは観たい新作は全編観てましたけどね…(๑´ڡ`๑)