【映画館のタブー】退場せずに、複数の映画を観続けられるのか?

みやざわ支配人

「映画のチケットを1枚買って、普通に映画を観る。そのまま退場せずに、別の映画って観れるんじゃない?」

映画館に長年勤務をしていると、稀にこういう考えを持ったお客様がいらっしゃいます。

実際、行動に移す方は稀かもしれませんが、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか?

みやざわ支配人
思いついても、絶対にやったらダメーーーーーー!!

少し考えればわかる事ですが、もちろんダメです。普通に犯罪です。

今日は、そんな映画館のタブーとも言える”退場せずに映画を観続ける”と、どうなるか。その真実を紐解いていきます。

どんな犯罪になるのか。

 

そもそも、本来購入したチケット以外の作品を観る事自体が違法行為ではあるものの、その内容によって問われる罪も変わってきます。

ここでは、”映画を違法に鑑賞する”3つのパターンと、それがどういった罪になるのかを説明します。

  1. こっそり入場して鑑賞。
  2. スタッフを騙して鑑賞。
  3. 入れ替えの間は隠れて、時間になったら鑑賞。

1.こっそり入場して鑑賞。

こちらは一般のお客様にはあまり該当しないかも知れませんが、従業員通路や何かしらの裏口からシアター内に侵入し、そのまま映画を鑑賞するようなパターンです。

既に犯罪臭は漂っていますが、この場合はどういう罪になるのでしょうか。

■チケットを買わずに不正に入場する行為

刑法上、建造物侵入罪が成立します。

引用:シェアしたくなる法律相談所

映画館という場所からすると,建造物侵入は成立しにくいです。
ただ,偽計業務妨害罪が成立する可能性はあります。(※一部抜粋)

引用:弁護士ドットコム

弁護士さんによって、また状況によって解釈が変わって来る部分もあるみたいですが、「建造物侵入罪」か「偽計業務妨害罪」に当たるようです。

後者の弁護士さんが仰る通り、映画館は公共性の高い施設で、特にロビーなんかは誰でも自由に入れる空間なので、建造物侵入罪には当たらないのかも知れませんね。

2.スタッフを騙して鑑賞。

これは、例えば「座席にチケット置いて来ちゃった」などと再入場であるかのように装ったり、「一緒の友達が持って入っちゃった」などと、スタッフを騙して入場するパターンです。

偽造チケットで入場したり、「再入場で席にチケットがある」などと係り員に偽って入場した場合は利得詐欺罪が成立します。

引用:シェアしたくなる法律相談所

詐欺は人間を相手にしなければ成立しないですから,チケットを係員等に見せませんと成立しません。

引用:弁護士ドットコム

こちらは、やっぱりシンプルに詐欺関係の罪に該当するようですね。

そもそも、どんな条件でありシアター入口を通過する時はチケットを必要としている劇場も多いので、成立しにくいですが、一部ハッタリの上手いお客様とかに騙されちゃう時もあります。

3.入れ替えの間は隠れて、時間になったら鑑賞。

冒頭でも触れましたが、おそらく一番多く考えられている映画館での犯罪がこれでしょう。

今の時代、ほとんどのシネコンは定員入替制になっています。1つの上映回が終わる度に全てのお客様に退場して頂き、次の上映回のお客様を入場させる。この繰り返しで、みなさんには上映回ごとのチケットをご購入頂いています。

同じ作品であっても、時間や場所が違えば、そのチケットでは鑑賞出来ないという事です。

これは、“本来、退場しないといけない時に隠れて、スタッフを騙して鑑賞している”という事になるので、内容的には前述の2と同じ罪に当たるはずです。

個人的には、映画館の商品を勝手に盗み見しているので、窃盗罪に近いと思っているんですが、弁護士さんの証言がなかったので、ここでは名言を避けておきますね。

劇場の体制はどうなっているか。

 

「犯罪である事はわかったけど、実際それってバレるの?」

という声が聞こえてきそうなので、ここで劇場側の体制がどうなっているかもご紹介しておきましょう。

  • 見回り
  • 清掃
  • 監視カメラ
  • 違和感
  • お客様同士

見回り

映画館のスタッフは、映画上映中も常にシアター内の見回りをしています。頻度がどれくらいかというと、”2時間の作品で最低でも10回以上”です。

上映に問題がないか、シアター内の環境(音・温度など)は最適か、シアター内に異常がないか。などを、見回りで確認しています。

今回のケースで該当するのは「シアター内に異常がないか」の部分ですね。

見回りをするスタッフは、もちろんどの席にお客様が座っているかという情報を持っています。その状態でシアター内に見回りに入って、本来いるはずのないお客様が座っていたら、チケットの提示を求める場合があります。

該当の上映回のチケットを持っていないで映画を観ようとするお客様は、たいてい”少し変な席”に座っている事が多いので、すぐにバレます。

掃除

1つの上映回が終わって、次の上映回のお客様を入場させる前に、もちろんシアター 内の清掃に入ります。

この清掃に入るタイミングは、劇場によって結構バラつきがあります。

トイレなんかに隠れていると、どのタイミングでシアター 内に入って良いかわからず、変なタイミングで入場してきたりするので、これも簡単にバレます。

監視カメラ

結局、犯罪の抑制には監視カメラ。という事で、映画館も例外ではありません。

映画館の中には至る所にカメラが設置されており、だいたい「360°全方向」監視できて「自動録画付き」のものが多いです。ぼくが過去に在籍した劇場にも10個以上のカメラがありました。

監視カメラは、他にも色々と用途はありますが、劇場内で変な動きをしているお客様がいると一発でわかります。

違和感

これまでは、システム的に犯罪を抑制・発見する部分が多かったのですが、これは超アナログです。

人間の第六感とでも言いましょうか。そういう悪いことを企んでいる人は、絶対に普通のお客様とは違う動きをしていて、違うオーラを出しています。

それはきっと、「悪いことをするという事に対しての後ろめたさ」「バレたらどうしよう…という緊張」など、様々な要素が複合して現れるものだと思うのですが、こちら側からすると”完全にマークの対象”です。

過去に盗撮をしていたお客様を捕まえた事がありますが、その時も何か違和感を感じ、注意深くスタッフを監視していた結果でした。人間の感覚ってスゴイんです。

お客様同士

もし仮に、上記の全てを突破し、チケットがない状態で映画を鑑賞しようとしても、お客様から通報頂く場合があります。

もはや劇場の体制とは言えませんが…やっぱり悪い事は出来ないもので、“周りの目”というのが、最後は犯人を捕まえてくれるんですね。

これは、単純に「自分の席に別の人がいた」というパターンも多いですが、前述の違和感をお客様が感じてスタッフに言ってきてくれる事も多いです。

おそらく、席をこまめに移動したり、周りをキョロキョロ見回したり、何かしらの”変な動き”に違和感を感じて通報してくれます。

実際どうなる?

 

1つの映画が終わっても、退場せず複数の映画を観るという事が、どういった罪に当たるのか。それを劇場側は、どうやって取り締まっているのか。

この2点をご理解頂けたと思うので、「チケットなしで映画を観よう」なんて考える人はいなくなったはずですが、実際にやったらどうなるのか。最後に事例と合わせてご紹介しましょう。

まずはスタッフが気付く。

現場で一番最初に気付くのは、アルバイトスタッフです。

そして、気付いたアルバイトスタッフはマネージャーに状況を報告します。

みやざわ支配人
「マネージャー」や「アルバイトスタッフ」など、映画館で働く人の役割については、こちらの記事で詳しく紹介しているので、わからない方はご一読ください。

映画館で働くということ。〜基礎知識編〜

2018年7月26日

報告を受けたマネージャーは、実際にシアター 内に確認に行き、発見情報や監視カメラの映像を確認。色々な状況証拠を掴んだうえで、お客様ご本人にお声掛けする事になります。

どのタイミングで連れて行くか。

実際に本人にマネージャーから声を掛けるんですが、「勘違いしてた!」みたいな返答で誤魔化される場合もあります。

なので、上映が終わって出てきたところでお声掛けするケースが多いようです。

自分は1回やったことがあって、そんときは最後まで見れたけど出た所で捕まって、そのまま事務所連れてかれました(笑)
それで警察呼ばれて親呼ばれて大変なことになりました。

だからやめた方がいいよ!結構、監視されてますから。

引用:Yahoo!知恵袋

本編が10分も過ぎた頃に「その方」は駆け込むように入場して来て出入口に近い前方端の座席に着席されました。直後に映画館スタッフも入って来て場内を静かに一周し退場。

終映直後、場内が明るくなった途端に映画館側スタッフと警備員さんが「その方」の座席に直行し、今しがた鑑賞した回の入場券提示を求めました。

引用:Yahoo!知恵袋

残念ながら、ぼくが直接こういうケースを経験してないので、ネットの経験談からの引用になりますが、どちらも上映終了後に捕まってますね。

連れて行かれたら…

声を掛けられて、事務所に連れて行かれたら、そこから先は万引きで捕まった時と同じような出来事が起きます。

劇場のマネージャーや支配人から事実確認が行われ、警察や親に連絡が行き…と考えただけでも、恐ろしいほどのバッドエンドが目に浮かびますよね。

ここまできたら、そこの映画館に出入り禁止になるのはもちろん、犯罪者というレッテルが貼られてしまいます。本当にやめましょう。

最後に

映画館のタブーである、「退場せずに、複数の映画を観続けるとどうなるのか」についてご説明してきました。

当然ですが、映画館に法律の専門家はいません。

なので、その場で判断してどうこう…というより、こういった場合は警察に引き渡す事が映画館の役目になります。パトカーに乗らないためにも、こんな事を考えるのはやめましょう。

どうやって複数の映画を無料で観るか。という犯罪のやり方を考えるより、どうやったら映画のチケットを安く買えるか。どうやったら映画を楽しめるか。を考えましょう!(↓こちらの記事も参考にしてください。)

映画をお得に観る方法5選!映画通が毎回の映画観賞をお得にします

2018年4月6日

映画館という楽しい場所に犯罪が持ち込まれない事を願っています。みなさんも、素敵な映画時間を過ごせるように、こんな事は絶対にしないでください。よろしくお願いします。




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わたしが書きました。

with Theaterの支配人です。
7年間大手シネコンで劇場マネージャーを務めたのち、デザイン・マーケティングの仕事を経て独立。今でも映画館の仕事は素敵だと思っています。尊敬する人物はジャッキー・チェン。仕事でトム・クルーズに会った時に緊張し過ぎて顔が白くなった経験あり。