『The Big Short』
邦題『マネー・ショート』。監督は『俺達ニュースキャスター』のアダム・マッケイ。原作は映画化された『マネー・ボール』の作者でもあるマイケル・ルイス。
内容は、2008年のリーマンショック(リーマンショックと言ってるのはどうも日本だけらしい)当時に、世界中が大不況に陥った中で、逆にボロ儲けした人達の話。簡潔に言ってしまえば、絶対無欠と言われた住宅ローンバブルが弾けるのを予測して、それに保険をかける。そしてそれが弾けたときに、莫大な保険料が入るって仕組みらしい。劇中に色々な小難しい経済用語が出てくるのだけど、最近で言う『ウルフ・オブ・ウォールストリート』みたいに、第三の壁(劇と観客の壁)を破りスクリーンの向こうからやたらと観客に向けて解説してくれる。しかも、ブロンドの美女がセクシーに説明してくれたりと至れり尽くせり。NHKの深夜バージョンみたいなノリでマクロ経済学とかを説明してくれる。僕みたいに経済のけの字も知らない人には非常に為になるし、わかりやすい。
それだけじゃなく、莫大な金が行き来する経済の中で苦しんでいる弱者がいるって事も教えてくれる。一番ガツンときたセリフが、ライアン・ゴズリング演じる若手銀行家が言った言葉。「システムそのものが腐ってるのにその中で生きていくのか」めいたセリフ(うろ覚え)。話が進むにつれ、アメリカ政府、格付け機関、銀行、ローン会社、そのどれもが腐り果ててることがわかってくる。でかい組織に勝負を挑む個人が単純明快なヒーローとして描かれてるわけではなく、結局はその中でもがく姿も惜しみなく描かれている。『マネー・ボール』みたいに心に響く映画ではなかったけど、小難しい題材に対して軽快に話を進めるのが、すごく気持ちよかった。
『ヘイトフル・エイト』
タランティーノ御大の最新作。猛吹雪の中の雪小屋で、賞金首と彼に掴まった移送中の極悪人含む八人がてんやわんやするお話。『レザボア・ドッグス』的な映画の進み方はするんだけど、何が豪華って作曲がエンニオ・モリコーネ。西部劇の大御所作曲家である彼が関わってるとなって、やっぱり音楽が格好いいです。
さらに何とこの映画、70mmフィルム仕様で撮影されています。フィルム上映で観たかった…。デジタル化が進む中、デジタルとフィルムの共存の道を探すタランティーノ監督には脱帽です。コストメリット的にも、フィルムにする理由なんて今やなくなってきてはいるのだけど、ニトリの皿があると同時に、手作りの皿や食器が一家に一つはあってもいいと思うんですよ。衣料量販店の服ばっかりの中に、手編みのマフラーがあってもいいと思うんです。フィルムとデジタルの違いなんてわかんねーって言う人もいるかもしれんけどですが、やっぱり違うんです。死にゆく文化とするのは非常に勿体ない気がします。