このクソみたいな世界の片隅に。

能年玲奈さんがいつの間にか芸名をのんに変えていた。

僕は『あまちゃん』にどハマりしていて、放送当時は早起きして食い入る様に見ていた。見逃したらお昼の回を見るために一度帰宅していたりもした。そこで初めて知った能年玲奈さん。あーええ感じにほんわかした役者さんやなこれからよう見るんやろな、と思っていたら『あまちゃん』放送終了後、その存在は閑古鳥が鳴くようになってしまった。

『この世界の片隅に』

そして今年、『この世界の片隅に』が公開された。

主人公すずの声を当てるのは「のん」という声優。最初はどこかの声優さんかと思ったけど、なんとびっくり能年玲奈とのこと。監督の片渕須直さんの『マイマイ新子と千年の魔法』は凄く温かく何度も観たくなるアニメ映画だった。ただ、どういう映画?と聞かれた時に少し戸惑ってしまう。

なんていうか・・・昔を舞台にした子供の想像力が生き生きとした・・・。

と、ぐらいしか言いようがない。片渕須直さんは多分、僕なんかが到底理解できないような雲の上で映画を作ってらっしゃるのだと観る度に思わされる。しかもそれでいて、日常の描写がとても繊細で、アニメを観ている気分にならない。とりあえず観てくれとしか言いようのない素晴らしい映画である。

先日テアトル梅田にて『この世界の片隅に』を観てきた。

クラウドファンディングを発端として制作されたこの映画。観賞当日は平日の夕方の回なのにほぼ満席。メディア露出も少なく、小規模公開ながらじわじわと広がりつつある。『マイマイ新子』公開時も、数館での上映開始だったが、鑑賞者の熱心な署名活動等によりロングランを達成。今回のスタート規模は前回よりも大きくはなっているが、まだまだ上映館が増えて欲しい。僕も出来る限り観に行きます。『この世界の片隅に』の内容をできるだけネタバレなしに、多くの人が観に行きたいと感じて頂ける様になんとか頑張って伝えたいと思います。

物語は第二次世界大戦が始まる少し前から、昭和20年の8月6日に向かって進んで行く。

浦野すずは広島の海が近い片田舎で家族と海苔作りを商売として育っていた。のんびりとしたすずは、事なかれ主義で日々の出来事に流されていく。彼女の趣味は絵を描くこと。ありもしないストーリーを絵にして妹を楽しませている。

ある日、昔すずに一目惚れをしたという青年の元へ急に嫁ぐ事になった。困ったな~と言いながらも広島の呉の彼の実家で新婚生活が始まる。彼女は日々物資が少なくなっていく中、たまには絵を描いたり、遊郭に迷い込んだり、日々を楽しく過ごしていた。

しかし、戦争はじわじわと彼女の日常を奪っていく。

 

ざっとこんな感じです。

原作はこうの史代さんが描いた同名漫画。戦時中を舞台にしたアニメ映画といえば、ジブリの『火垂るの墓』をイメージする人が多いと思う。全編通して辛くて、暗くて、観ていて悲しくなってくる。過酷な戦争体験映画だ。しかし『この世界の片隅に』は違う。全編通して楽しいのだ。すずのキャラと、それを取り巻く人々とのやり取りがおかしくて笑えてくる。

物が少ないなりに、工夫して生きているけどたまにヘマもする。米をなるべく大粒にしようと昔の武将の真似をするが、味の全くない米を炊いてしまったり。一生懸命だから、可笑しくなってしまう。サザエさんを見ているような面白さがあった。

そりゃそうだよなと。

戦争が酷かったと今の何も体験していない僕らは偉そうに言えるけど、当時の人にも日常はあった。日々の楽しみと、生活があった。この映画では誰も「戦争はひどい」とは言わない。国のために、片腕一本なくなっても家財を盗られても命は残ってて「良かったね」と言う。さらに戦争は、彼女の楽しみである絵を描くことさえ奪っていく。日常の中で、唯一の楽しみであった絵を描くということを世界に奪われていく。この世界の片隅にある小さなものまで奪っていってしまう。

そしてそんなすずの声に、女優のんがぴったりとはまっている。のん以外に考えられないくらいに。

能年玲奈=すずだった

僕は事前に能年玲奈の今の状況を知っておいた。どうやら彼女は事務所とのいざこざで本名を使ってはいけない状態になっている。それどころか、所謂”干され”ていたらしい。僕の好きな俳優西島秀俊さんも、数年前は芸能事務所との意見の食い違いで干されていた。彼はその間、必死に映画を観て演技の勉強をしまくったとのこと。

朝ドラで飛躍しようとしていた女優に社会が放った仕打ち。それがどうしても劇中のすずの状況と被ってしまい、終盤では大いに涙してしまった。いい大人が、人の日常を奪う様なことをしていいんですか。僕は芸能ニュースってのが反吐が出るくらい嫌いで、それを知ってドヤ顔で喋っている人も唾をかけたくなる程嫌いです。めでたいニュースならまだしも。

とりあえず『この世界の片隅に』を観てほしい。

色々と思うとこがあったものの、僕はまだまだ『この世界の片隅に』を観足りない。なんでかわからないけど凄くいいという気持ちをどうにかして伝えたいが、どうにも上記のような感じになっちゃう。「兎に角ええねんこの映画」が今の感想で、口座の残額が4万を切っても家族を何とか養いつつこの映画を作った片渕須直監督の爪の垢を煎じて飲ませて頂きたいとも思っている。本当に『この世界の片隅に』は大傑作で、まだ一回観ただけでインターネットの片隅でこんな文をつらつらと書くのも物凄い恥ずかしいんだけど、とりあえず観てくれ。






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PROFILEわたしが書きました。

いとうMgr.

某大手シネコンにて、アルバイトスタッフとして4年間勤務して、喜びも悲しみも味わった男性。
映写技師からポップコーンの販売まで、4年間勤めてみればアルバイトのほとんどをこなせるようになっていた。好きな映画はエドガー・ライト作品。大手シネコンではエドガー・ライト作品は中々上映されず、当時は憤りを抱いていた。