シン・ウルトラマンを見てきた。
制作発表されたときから完成を待ち遠しく思っていた人もいるだろう。一言で言うと、これまでウルトラマンが好きだった人も、あまり知らなかった人も「ウルトラマン」というヒーローについて考え、好きになれる作品だったと思う。
これから映画をご覧になる方は、ネタバレが含まれることをご確認のうえ、お読みください。
愛と実績のある作り手のリメイク
「シン・」とタイトルについているからには比べてしまう「シン・ゴジラ」との違いとして一番大きいのは、「シン・ウルトラマン」は最初のTVシリーズ「ウルトラマン」を丁寧に忠実に再現している点だろう。
ストーリーの構成、セリフ、画面画角、劇伴、ちょっとしたウルトラマンの仕草と、端々から原点へのリスペクトと愛を感じる。原点の再現が、時に大胆にそのまま採用されたり、現代ナイズした演出に切り替えられたりしながら次々と繰り出され、いかに1966年に放映された「ウルトラマン」が奇想天外な物語だったかを思い知らされる。
また、初めてウルトラマンに触れる人には、ありえないことが矢継ぎ早におきるSF作品として、観賞できるだろう。
突然巨大な女性が街中に現れたら…あなたならどうする?
ユニークな外星人(宇宙人)たち
作品の中盤からは、ザラブ星人やメフィラス星人といった外星人(宇宙人)との話がメインだ。
そもそも仕事で星を滅ぼすザラブ星人、気に入ったから思うがままに管理したいメフィラス星人…。それらとの対比で、寡黙な外星人「ウルトラマン」の思考が浮き彫りになってくる。ウルトラマンはどうして地球を、そして人間を守ってくれるのか?メフィラス星人との小難しい会話の中から、彼の思考を拾えると、この映画の理解が深まるだろう。
筆者はここでふと、そうかウルトラマンって地球に住んでないのに、人間(地球)のために戦ってくれてたんだ!と、キャラクターのシンプルな設定に思いを馳せた。これがまさにウルトラマンという「ヒーロー」の大きな魅力の一つではないだろうか?この映画は、ウルトラマンというキャラクターの存在を再認識させてくれる作りになっているのだ。鑑賞後、すっかり見慣れたデザインだったキャラクターが、突然違った風に見えてくるだろう。
ところで、やたら故事成語を引用する外星人役山本耕史と、人間世界に溶け込もうと猛勉強するウルトラマン(神永新二)の斎藤工、双方「人間のフリをした異星人」の佇まいが素晴らしかった。本当に人間なのかな?と疑ってしまいそうだ。怪演役者、私の好きな言葉です。
外星人の自己犠牲精神と愛
「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」。
本作のキャッチコピーであり、原典の最終回にウルトラマンに投げられる言葉だ。
本作は「ウルトラマンがなぜ人間に興味を持ち、どう関わりたいと考えているか」が主題と言っていいだろう。
ラストシーン「今後様々な困難が待ち受ける地球に、自分の体を残したい」「人類を理解しようと努めたが、わからなかった」と言うウルトラマンから、真摯でまっすぐな人間への愛を感じる。
本来、不死に近い寿命を持つはずの生命が、人間と融合することで生と死への渇望を持つ。混沌とした感情を持ち、神様のような存在から人間へと近づいていく。
「(人間について)考えたが、わからなかった」と吐露し、人間に近づいていくウルトラマンは、不完全で愛おしく、観賞者の私達は彼を好きにならざるを得ない。
だが、ウルトラマンから差し伸べられた理解の手を、人間は十分に握り返せるだろうか。
最後に目覚めた神永新二が、ウルトラマンか否かは、今後の私達の未来で分かるのかもしれない。