映画館のアルバイトについて、内容や時給などその評判を元劇場スタッフが語る

みやざわ支配人

さて、もうすぐ新年度が始まります。新しく高校生になる方、大学生になる方、新しい生活が始まりますね。その中で必ず話題に上がるのが「バイトどうしよっかな〜」だと思います。

この記事では、そんな数あるアルバイトの中から、”映画館”のアルバイトについてお話します。4年間勤務して、映画館内全ての担当を経験した元劇場スタッフ私、いとうMgr.が、映画館でのアルバイトを始める前の不安を解消したり、楽しさを伝えるお手伝いができればなと思います。

映画館のアルバイト内容

 

まずは映画館のアルバイトについて、サクッと内容をお話ししようかと思います。世の中星の数ほどアルバイトはありますが、何も映画館でのお仕事は特別なものではありません。資格も免許も不要ですし、誰でも始めることができます。基本の業務や勤務時間について書いていきます。

接客が基本

これを読んでいる方は、今までに一度は必ず映画館に行った経験があるかと思います。劇場にもよるのですが、その時最低でも3回は劇場スタッフと接しているはずです。まずはチケットを買う時。次に食べ物やドリンクを買う時。そして入場する時。

劇場スタッフは映画館内の至る所にいます。そしてそのほとんどがアルバイトスタッフです。チケット売り場やフード売り場など、「セクション」と呼ばれる各持ち場にスタッフがいて、どれもが基本的にはお客さんと接する接客業となっています。

勤務時間

映画館のスタッフの勤務時間は、劇場の上映スケジュールにもよります。都心部はスーパーレイトショーといって、深夜帯まで映画を上映しているところもあります。しかし、おおよその稼働時間は9:00~23:00となっています。ですので、9:00~23:00間でのシフト勤務となります。

詳細なシフトは、劇場にもよるのですが、大体が3~8時間となっています。

向いている人

仕事には向き不向きがありますよね。明らかに自分に向いていない仕事をしてしまうと、毎日が辛くなってしまいます。映画館のアルバイトに向いている人はズバリ、下記のどれかに該当する人かと思います。

①人と喋るのが苦ではない
②映画が好き
③立ちっぱなしでも大丈夫

これに尽きると思います。これ以外の方が向いていないかと言えば、勿論そんなことはありません。私自身も最初は人と喋るのが苦手で、なるべく人と接しない映写というセクションを選んだのですが、結局チケット売り場に配属になってしまいました。しかし、慣れてしまうとどうということはありません。

面接に受かる方法

映画館のアルバイトは、結構倍率が高くなっています。パリッと制服を来て、若い男女が集まっているので、格好良く見えたりしますよね。あと後述する各種特典が目当てで応募が多くなります。

映画館で働きたい!と既に思っている方で、どうやって面接に受かろうか…と悩んでいる方へのアドバイスです。しっかりと受け答えができて、接客ができそうと自己PRすれば大丈夫です。逆に映画が好き過ぎて、面接で映画の話ばかりしてしまうのはNGです。

アルバイト採用を行うマネージャーと呼ばれる社員の方々は、面接を受ける学生の方や、若い主婦の方とそこまで年齢は変わりません。学生の方は、背伸びした自己PRをしようとせず、少し年上の人と話すという気分で明るく笑顔で面接に挑めば大丈夫です。

さて、映画館のアルバイト概要はこれくらいにして、次は気になる時給についてです。

気になる時給は?

 

どんなアルバイトを始めるにしろ、時給って気になりますよね。忙しすぎて時給が低いのは勿論嫌ですし、かと行って暇すぎて時給もスズメの涙というのも嫌ですね。程よい収入を得ながら、仕事も楽しみたいですね。ズバリ言うと、仕事内容に対して映画館の時給は普通です。以下、映画館のアルバイトの時給詳細です。

基本給

基本給は勿論、地域にもよりますし、その映画館の繁忙具合にもよります。都心は勿論高くなりますし、逆に地方などはかなり低いです。おおよそ、時給750円〜1,000円が基本給となります。ちなみに私はどちらかと言えば地方でしたので、基本給は時給750円でした。

今考えればべらぼうに安いのですが、下記にあげる深夜増しなどを使って、多い時に月に12万円ほど稼いでいました。学生で、しかも自分の好きな仕事をやりながらこれくらい稼げれば文句はないですよね。

ただ、勿論時給目当てでアルバイトを探している人もいるかとは思います。そういった方で地方にいるという方にはあまりお勧めできません。どうしてもと言う場合は掛け持ちでやるのがいいかと思います。

深夜増し

多くの劇場は、運営母体が大手企業のため、基本的に労働基準法は遵守しています。(参考記事:映画館の”王道”、TOHOシネマズについて)ですので、22時以降の勤務には深夜割増がきちんと適用されて、時給が25%アップします。実はこれが結構大きいのです。

勤務時間の項目で述べた通り、映画館のアルバイトは22時以降に食い込むことが多いです。レイトショーがあるので、どうしても22時には終われないのです。セクションによって差はあるのですが、一番長い映写やフロアセクションですと、最後の上映が終了した後まで勤務が続きます。

具体例

それでは、映画館でバイトをした時にどれくらい稼げるのか一つ例を挙げてみましょう。今回はフロアセクションで働いているAさんでイメージしてみます。

【Aさん】
大学二年生。そこそこ来館者数の多い都心寄りの劇場でアルバイト勤務二年目。時給900円。
週に4回ほど勤務。フロアセクションで、平日土日問わず。平日は大学の授業が終わった時間から。
月曜日:16:00~0:00(休憩45分間)7時間15分勤務、うち深夜割増2時間
水曜日:16:00~0:00(休憩45分間)7時間15分勤務、うち深夜割増2時間
金曜日:16:00~23:00(休憩45分間)6時間15分勤務、うち深夜割増1時間
日曜日:9:00~16:00(休憩45分間)6時間15分勤務

これで週に基本給で19,800円、深夜割増分で6,000円の計25,800円稼いでいます。単純計算するとこれが4週分で、月に103,200円の稼ぎになりますね。都心に近く来館者の多い劇場ですので、忙しい時間帯が多いと予想されますが、意外と稼いでいますね。

これはあくまでも例えですので、ここから天引きされる所得税分があったり、交通費の支給額も劇場によって異なってきますので一概には言えませんが、給料だけみれば一般的なアルバイトという感じですね。

担当する場所はどうなるのか?

 

何度か映画館には「セクション」が存在して、チケット売り場やポップコーン売り場があるお話をしてきました。ここでは、各セクションの業務や全セクションをしなくちゃいけないのか?というところをお話します。まずは各セクションの業務などの説明から。※劇場によりセクションの呼び名は異なります

チケット

お客さんが一番最初に訪れる場所ですね。チケット売り場です。業務はチケットを売ることですが、基本的にお客さんとやり取りをしながら、人数を聞いたり、ポイントカードの有無を聞いたり、座席を確保したりなどです。

ザ・接客とも言えるセクションで、勤務時間のほとんどがお客さんとのやり取りです。あと、お金のやり取りがあるので、過不足などを出さないように気をつけます。私のいた劇場では、過不足を出してしまうと罰則まではなかったものの、「なぜ過不足が出たのか?」「本当に過不足なのか?(どこかに紙幣が挟まっていないか)」と色々と調べないといけなくなります。

特別知識がいるわけではないですが、チケットと言っても券種が様々で、使える前売り券やそうでない前売り券、株主優待券などもありますので、最初に覚えることは結構多いです。まあマニュアル化されてるので、困ったらその場で調べれば済みますが。

椅子がついている劇場もあるのですが、基本的に立ちっぱなしです。あとチケット売り場から離れられないため、暇な時はとことん暇です。度がすぎるとダメですが、暇な時は一緒に入ったスタッフと喋ったり、映画のチラシを眺めたりします。

昨今はチケット券売機が設置されている映画館が増えてきて、このセクション自体が存在しないところもあります。

コンセッション

ポップコーンやドリンク売り場のことです。ここは映画館内でも特殊というか唯一食品を扱うところなので、どちらかと言えばファーストフード店のアルバイトに似ています。ですので衛生面は気をつけなければいけませんし、髪形や爪の縛りも他のセクションに比べると少し厳しいです。

ポップコーンを扱うため、結構火傷したり匂いがついたりします。いい匂いといえばいい匂いなんですが、女の子とかは結構気にしちゃいますね。

メニューを覚えなければいけないのと、注文を受ける人と作る人がいる場合はチームワークも大切です。だからこのセクションは、結構セクション内で付き合ったりする人とか、みんなで遊びに行ったりする機会が多いです。

手っ取り早くアルバイトで友達を作りたい!という方はいいかもしれません。

フロア

劇場内のお客様の誘導や、退場後の清掃などを行うセクションです。仕事の種類はここが一番多く、全部ではありませんが、下記の通りとなります。

  • チケットのもぎり(ポディアム業務)
  • 退場後の清掃
  • 入場等のアナウンス(ポディアム業務)
  • 入場者特典や3Dメガネの配布
  • 各スクリーンのチェック業務
  • 館内全体の清掃、チェック業務
  • お客様応対

ざっくりと言えば、映画館を管理するセクションになります。ちなみにポディアムとは、チケットもぎりの入り口のことですね。ここに常に一人立っていて、アナウンスなどを行ったりします。

退場後の清掃が主に動き回る業務となります。お客さんが出て行った後のシアター内を、忘れ物がないかなどをチェックしながら、ポップコーンやジュースのこぼれを掃除します。掃除自体は箒とちりとりを持ってカポカポしてくだけなのですが、たまにひどいジュースこぼれなどがあると大変です。

ちなみに、ジュースのこぼれが上映開始間近にあった時も大変です。座席がびしょびしょになるなどド派手にこぼしてしまったお客さんがいた場合、上映が始まるまでに処理しなければいけません。時間との勝負ですね。

映画館のスケジュールはある程度まとまって上映が始まるようになっているので、入場と上映がひと段落すると、各スクリーンのチェックに回ったりします。ちょっとした空き時間ですね。真似してはいけませんが、この間に監視カメラの隙を縫ってちょっと休憩したり…笑

他のセクションと比べてかなり動き回るセクションですが、運動部に所属していなかった私でも余裕を持ってこなせるくらいですので、そこまでの体力仕事ではありません。

映写

スクリーンの裏側で、映画を上映する業務です。昨今は基本的にデジタル化されているので、全て自動で稼働しています。ですので、このセクションの募集というのは無くなっています。

昔話(と言っても数年前)にはなりますが、映画がフィルム上映の時はここのセクションは常に人がいるセクションでした。上映前にフィルムを映写機にかけて上映準備したり、上映終了後の映画のフィルムを巻き取ったり、異常がないかチェックしたり、映画の本編に予告フィルムをつける編集作業をしたり。

私は映写セクションのフィルム時代に勤めていたのですが、かなり職人寄りのセクションでした。映写技師という職業があったくらいなので。当時は、他のセクションに比べて魅力的で、ずっと薄暗い映写室で仕事をするのでかなり楽しかったです…笑

セクションまとめ

さて、一通りセクションを紹介したところで、映画館のアルバイトってこれ全部やらなきゃいけないの!?って疑問に思うかもしれませんが大丈夫です。大抵は各セクション担当になると、他のセクションに回ることはありません

ただし、チケットや映写など、昨今は自動化が進んでいますので、その分雇う人を減らして、オールマイティに全てのセクションをこなせるスタッフを育てたり採用したりする映画館が増えているのは事実です。

そうすることで、混雑時に手の空いているセクションからヘルプ要員としても回せるので、映画館側にとってはメリットがあるのですね。だから一概には映画館のアルバイトをするときは一つのセクションでいいとは言えませんが、これこそ劇場によりますし、自分が入れるシフトの時間にもよります。

あとセクションごとに時給に違いがあるのか?という疑問があるかと思いますが、基本的に全て同じ時給です。

映画館で働く特典

 

アルバイトといえば、働くことで受けられる福利厚生、特典制度も魅力的ですよね。映画館ならではの特典もありますので、紹介します。

映画が無料で観れる!

これが一番大きいです。映画がなんと無料で鑑賞できる特典をつけている劇場が多いのです。今まで二つの映画館でアルバイトをしましたが、両方ともその特典はありました。

ただ勿論条件もあります。例えば、自分がシフト希望を出していて、シフトが入らなかった日限定とか、客席が半分以下の上映回限定とかです。

私が働いていた映画館では、同伴者一人も無料で観れる制度だったので、友達や恋人と行ったりしていました。ただ彼女をバイト先に連れて行くと100%いじられてしまいます。お金のない大学生時代にはこの制度をかなり使い込んでいました。

この特典は映画館がアルバイト採用をするときに必ずと言っていい程売り文句として使われているので、応募しようとしている映画館がこの特典を設けているかはすぐにわかると思います。

フード系の特典は無い

映画館と言えば美味しいポップコーンやチュリトスですが、残念ながらこれらの特典がある劇場は聞いたことがありません。まあ映画と違って数に限りがあるものなので、全スタッフに特典として配っていると痛い損失が出てしまいますもんね。

勤務中も…

ここからは映画好き限定なのですが、フロアや映写セクションでシアター内のチェックをするときに、映画を観ることができます。観れると言っても業務のうちでほんの数分なのですが、例えば自分の好きな映画のワンシーンを観ることができます。最新の映画情報や予告編などもいち早く観ることができます。

あと、たまーにある公開記念イベントで、有名人が来館したりします。私がいた劇場でも、結構な割合できていました。しかも、自分たちが使っている休憩室を使ったりするので、もし意中の有名人が来館したときは歓喜ですね。

しんどいことと楽しいこと

 

アルバイトは楽しむもの、というのが私の自論で、どうせ数百円しか変わらない時給なら、自分が興味のあることや好きなこと、スタッフがいい人が多い仕事の方がいいですよね。最後に映画館のアルバイトのしんどいことと楽しいことです。

しんどいとこ

私が経験した中では、映画館のアルバイトでしんどいことはありませんでした。確かにややこしいお客さんの接客が辛いとか、立ちっぱなしがしんどいとかはあったのですが、そういったものはどのアルバイトにも必ずある普遍的なしんどさで、映画館特有のしんどさはありませんでした。

平均してそこまで高く無い時給ですので、時給相応というか、居酒屋とかのアルバイトに比べると格段に体力的にも精神的にもしんどさは軽度です。

ただ、映画館のアルバイトは劇場の社員さんと一緒に仕事をしているので、この社員さん同士の仲が険悪とか、怖い上司がいる状態ですと、劇場自体の雰囲気もそうなってしまうので、しんどさは変わります。

楽しいこと

映画好きなら、だいたい楽しいと思います笑。雑な言い方になってしまいますが、『映画の上映に携わる』ということは、もしかすると今から観る一本が観ている人の人生を変える一本かもしれないので、鑑賞するまでに心地の良い時間を提供したり、その瞬間に関われるというのは体験して初めてわかる素晴らしい実感があると思います。

私は運良く、社員もスタッフも仲が良く、毎日劇的に忙しい劇場でもなかったので、かなり楽しめました。あとは女性スタッフが多いので、彼女を作りたい男子大学生などは、他校の人も多く集まっていて出会いが多いと思いますのでオススメです。笑

まとめ

映画館のアルバイトについて色々と書きましたが、いかがでしたでしょうか。春から新しいアルバイトを探している人で、映画館でのアルバイトが気になっている人にとって、少しでも指南書的な役割を果たしていれば幸いです。

ここからは自分語りになりますが、私は映画館でフィルム時代に映写技師をやって、控えめに言っても人生が変わりました。そこで会った人や映写技師という仕事に取り憑かれてしまい、その後の人生に多大な影響を及ぼしました。

映画館を去った後、当時のスタッフで今でも付き合いのある人はいますし、本当にいいアルバイトを選んだと思っています。ちなみに、なぜ私が当時映画館のアルバイトに決めたかと言うと、「近く」て「映画が見放題」で「時給も相場」と言う単純な理由です。笑

ではでは、これを読んでいる方がいい映画館で楽しくアルバイトができるように。




気になることは、
みやざわ支配人に
直接聞いてみよう!

「映画館の気になるアレコレ」「映画鑑賞前のトラブル」など、
気になる事はwith Theaterの支配人に直接聞いてみよう!
TwitterかLINEで、みなさんからの質問を受け付けています。

わたしが書きました。

with Theaterの支配人です。
7年間大手シネコンで劇場マネージャーを務めたのち、デザイン・マーケティングの仕事を経て独立。今でも映画館の仕事は素敵だと思っています。尊敬する人物はジャッキー・チェン。仕事でトム・クルーズに会った時に緊張し過ぎて顔が白くなった経験あり。