FLAT?SCOPE?映画館での上映サイズとその違いをご紹介!

みやざわ支配人

映画館で映画を鑑賞している際に、上下または左右に黒枠が表示されているのを見て「これって何?」と疑問に思った経験はありませんか。

実は、映画の上映サイズには大きく分けて「フラットサイズ」と「スコープサイズ」の2種類が存在します。

それぞれアスペクト比が異なるため、映画の映像規格によっては黒い帯を挿入したり、映像をトリミングしたりする必要があるんです。

そこで本記事では、映画の上映サイズと違いについてくわしくご紹介します。

映画の上映サイズの種類

映画館のスクリーンサイズには、次の2種類があります。

  • フラット・サイズ(ビスタサイズ)
  • スコープ・サイズ(シネマスコープサイズ)

かんたんに言えば、これら2つはスクリーンサイズの「アスペクト比」が異なります。

ノートブックに「A4」「B5」というサイズ規格があるように、映画には作品ごとに「フラット・サイズ」「スコープ・サイズ」といった規格があるんです。

これらの規格は、作品の内容やメインで映る情景などを考慮した上で、監督によって決められています。

1.FLAT(フラット)・サイズとは?

フラットサイズとは、いわゆる「ビスタ・サイズ」のこと。アメリカのパラマウント・ピクチャーズによって開発されました。

普段、テレビやパソコン、スマホなどで映像を見ているサイズ感に近いもので、一般的には縦横比が「1.66:1」程度の上映サイズです。

このビスタサイズは、さらに「アメリカン・ビスタ」と「ヨーロッパ・ビスタ」の2種類に分けられます。

しかし、近年では次にご紹介する「スコープサイズ(シネスコサイズ)」の作品が多く、ビスタサイズの作品に出会うことも少なくなりました。

2.SCOPE(スコープ)・サイズとは?

スコープサイズとは、いわゆる「シネマスコープ・サイズ」のことで、横に長いスクリーンのことを指します。略して「シネスコサイズ」と呼ばれることも。

スコープサイズは1950年代、家庭用テレビに対抗するためにアメリカの20世紀フォックス社によって開発されました。

TVやパソコンなどで映画を見ている時に、上下に黒が出て全体的に横長の映像になっているものがこのサイズに近いです。

こちらのスコープサイズは一般的に「2:1以上」の上映サイズのことを差しています。(厳密にはこちらも複数サイズあるのですが、ここでは割愛します)

通常のスクリーンよりも横幅が長いので、より迫力のある映像を上映することが可能です。

その一方で、スコープサイズの大掛かりなセットにはコストがかかるというデメリットがあります。

また、テレビ規格のサイズとアスペクト比が異なり、テレビに流すと上下に黒幕が入ってしまうのもデメリットのひとつです。

『ダンケルク』では映像の40%がカットされて上映されていた?

2017年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』を例にとって、映画の上映サイズについて考えてみましょう。

『ダンケルク』は、本編のほとんどが正方形に近いアスペクト比の「IMAXフィルム」で撮影された作品です。

しかし、私達が利用する映画館(シネコン)のスクリーンは、正方形というよりも横に長い形状をしていますよね。

そのため、『ダンケルク』をシネコンのスクリーンで上映するためには、上下をカットする必要があったんです。

カットされた部分は約40%にも及んでおり、シネコンの通常スクリーンで『ダンケルク』を見た人たちは、実際の映像の6〜7割しか見られていなかったということになります。

補足:カーテンによるスクリーン調整について

ここまでで、映画の上映サイズについてお伝えしました。

映画の上映サイズが作品に異なるように、映画館のスクリーンサイズも劇場によって異なります。そのため、作品の映像サイズを劇場のスクリーンサイズを合致させるために、以前はカーテンを使ってサイズを調整していました。

しかし、実際にスクリーン横のカーテンで画面サイズを調整していたのはもう今から10年以上も前の話。

現在では、ほとんどの映画館・シネコンにて「デジタル映写機」が導入されているため、カーテンを使ってスクリーンサイズを調整することはほとんどありません。

デジタル上映では、スクリーンサイズを調整する代わりに、映像をトリミングしたり、上映の際に上下・左右に黒帯を入れたりする方法が一般的です。

つまり、本来ビスタサイズである作品が、スコープサイズにトリミングされた状態で上映されているということがあるのはこのためですね。

デジタル上映は、上映にかかるコストや人員を大幅に削減することができ、映画の配給会社にとってメリットが大きいため、現在では主流の上映方法となっています。

しかし、カーテンでスクリーンサイズを調節する昔ながらのスタイルが好きだった人からすると、カーテン稼働のない映画館はすこし寂しく感じてしまうかもしれません。

実際に、多くのシネコンがカーテン稼働式・フィルム上映から、カーテン稼働なし・デジタル上映へと移行した約10年前には、「がっかりした…」「画面両端に黒い帯があるのはどうしても気になってしまう…」などといった声が目立ちました。

カーテンが稼働する映画館はまだあるの?

中には、「カーテンが稼働する映画館で映画を堪能したい!」という方もいるでしょう。

上でお伝えしたとおり、最近では上映前後にカーテンを稼働させてスクリーンサイズを調整する劇場はかなり少数派です。

というのも、大手シネコンや映画館では、デジタル上映が主流になり、カーテンは10年ほど前に撤去されてしまっています。

もし、「カーテンが稼働する映画館に行ってみたい…」と考えているのであれば、まずその劇場が「フィルム上映にこだわっているかどうか」がカギとなります。

フィルム上映にこだわっている映画館や昔からある映画館なら、カーテンが稼働する姿をまだ見られるかもしれません。

おわりに…

今回は、意外と知らない映画館のスクリーンサイズについてご紹介しました。

これまで、サイズやアスペクト比などを気にせずに映画を楽しんでいた人からすると、驚きだったのではないでしょうか。

これから映画を鑑賞する際には、ぜひ映像のサイズやアスペクト比、黒幕やカーテンの有無などにも注目してみてくださいね。




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わたしが書きました。

with Theaterの支配人です。
7年間大手シネコンで劇場マネージャーを務めたのち、デザイン・マーケティングの仕事を経て独立。今でも映画館の仕事は素敵だと思っています。尊敬する人物はジャッキー・チェン。仕事でトム・クルーズに会った時に緊張し過ぎて顔が白くなった経験あり。