魅力を解剖!『アベンジャーズ:エンドゲーム』レビュー※ネタバレあり

みやざわ支配人

※本記事には『アベンジャーズ:エンドゲーム』の核心に触れるネタバレが含まれています

興行的にも大成功を収めている『アベンジャーズ:エンドゲーム』。ここまで世界を熱狂の渦に巻き込んでいる本作の魅力って一体なんなのでしょう?かくいう僕もこの11年間で最もヒートアップしています。

この記事では『アベンジャーズ:エンドゲーム』についてのレビューや、今までの歴史を振り返りながらその魅力を解剖していこうと思います。

アメコミ映画の歴史

 

まずはアメコミ映画の歴史を遡りたいと思います。アメコミ映画の歴史はなかなか深いので、ビッグイベントのみ抽出しています。

1970年代

DCコミックの『スーパーマン』がクリストファー・リーヴ主演で実写化。その後、シリーズ化されて1987年の『スーパーマン/最強の敵』まで計4作制作された。

1980年代

ティム・バートン監督のもとDCコミックの『バッドマン』が実写化。主演は『スパイダーマン:ホームカミング』のヴァルチャー役や『バードマン』のマイケル・キートン。その後1997年まで、スタッフ・キャストが交代されながらも、『バットマンシリーズ』は続いた。

1990年代

MARVELコミックから、『ブレイド』が実写映画化。ヴァンパイアハンターの超厨二物語ながら、その後『ブレイド3』まで作られることに。ちなみに主演のウェズリー・スナイプスはその後脱税で逮捕。

2000年代

今尚続くシリーズ、MARVELコミックの『X-MEN』が実写映画化。ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンはその後『ローガン』まで、実に17年間もウルヴァリン役を務める。他にも、『ファンタスティック・フォー』やサム・ライミ版の『スパイダーマン』、DCコミックの『ウォッチメン』、クリストファー・ノーラン監督によるバットマン実写映画の『ダークナイト』など、興行的にも成功した作品が多数ありました。

そして何より、2008年、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)と呼ばれる、一連の作品が相互に関係しあう(原作ではよくある)クロスオーバー映画の記念すべき第1作『アイアンマン』が公開されました。蛇足ですが『ファンタスティック・フォー』のヒューマントーチ役は、我らがキャプテン・アメリカのクリス・エヴァンス。

2010年代

MCUにも拍車がかかり、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』や、ヒーローたちが実際にクロスオーバーを果たした『アベンジャーズ』、MCUにコミカルな風を吹き込んだ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』など、MCUだけでも2010年以降に21作品が公開。1年に2本ペースですよ。

『スパイダーマン』も『アメイジング・スパイダーマン』としてこの年代にリブートされるも、権利の関係でMCUには参加できていませんでしたが、『シビル・ウォー/キャプテンアメリカ』にてようやく合流。スパイダーマン関連ですと、『スパイダーバース』というMCUからは外れているものの、大ヒットしたアニメーション映画が制作されています。

DCコミックも負けじとユニバースを組み、新生『スーパーマン』や『ワンダーウーマン』、そしてクロスオーバー映画の『ジャスティス・リーグ』を制作。路線を大きく変更した『シャザム!』も公開されました。

その他のユニバース

 

話が少し逸れますが、MCUやDCコミックだけではなく、その他にも一連の映画作品が関係しあう、というシネマティック・ユニバースが大量にできています。

ダーク・ユニバース

こちらは往年のモンスター映画をMCUのように繋げ、ひとつのユニバースを作ろうとユニバーサルピクチャーズが立ち上げました。(『リーグ・オブ・レジェンズ』とい映画で結構まとまってしまっているのは置いといて…)

トム・クルーズ主演の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(『ハムナプトラ』のリブートです)が2017年に公開されるも、興行、批評の両サイドでずっこけ。なんと第1作にしてダーク・ユニバースは幕を閉じました

個人的には透明人間やフランケンシュタインを観たかったのですが…残念です。

モンスターバース

こちらはオタクから絶大な信頼を得ている「レジェンダリー・ピクチャーズ」が舵をとっているユニバースです。2014年に『GODZILLA ゴジラ』が公開され、続く2017年にロキ役のトム・ヒドルストンが主演で『キングコング:髑髏島の巨神』が公開されました。

日本から生まれた「ゴジラ」を、再度シリーズものにしようという狙いです。2019年の5月末には念願の怪獣大進撃映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開予定。

ざっとこんな風に、各社興行的な安定を狙いシネマティック・ユニバースを展開しています。しかしDCコミックスのDCユニバースを含め、どれもMCUには質・量共になかなか太刀打ちできていない現状。『アベンジャーズ:エンドゲーム』で一旦MCUは一区切りとなりましたが、その後の映画業界のシネマティック・ユニバースの流れはどうなっていくのか、目が離せません。

『アベンジャーズ:エンドゲーム』レビュー

 

では本題の『アベンジャーズ:エンドゲーム』のレビューです。

過去作観なくていいの?

まずMCUなのですが、『アベンジャーズ:エンドゲーム』を除くとなんと21作品も既存の作品があります。これを全部観ようと思うと、約52時間かかってしまいます。さすがにこんなに時間をとることは難しいですよね…。じゃあ過去作を観なくても楽しめるかと言われると僕の意見としては、断固、全作品を観た方がいいです。

これは、話がわかる、わからないの次元の話ではありません。話がわかるわからないで言うと21作品中の数作品くらい観れば話はわかると思います。(挙げるのであれば『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『アベンジャーズ』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』)

しかしここで言いたいのは、あなたがどれだけMCU作品を好きになれるか。どはまりするほど好きになったのであれば、絶対に全作品を観てから『アベンジャーズ:エンドゲーム』に挑んだ方がいいです。なぜなら、『アベンジャーズ:エンドゲーム』は11年間追いかけ続けてくれたファンに応える作品になっているからです。そしてなるべく公開順に観てください。

『アベンジャーズ』史上最もアガる

MCUシリーズを観に行く理由ってなんでしょうか?単に映画が面白いから、好きな俳優が出ているから。色々と理由があると思います。その中でも特に、観客を引きつけてやまないのは『アベンジャーズ』シリーズのヒーローたちが集合しているシーン。

『アベンジャーズ』ではNY合戦において、ヒーローたちをカメラが一周しながら捉えます。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では冒頭のソコヴィアでヒーローたちが横一列に並んで敵に突っ込んでいく姿をスローで写し、終盤はウルトロンからソコヴィアを落とすためのスイッチを守るために戦うヒーローをワンショットで表現。

この一枚絵のようなヒーローたちの大集合こそ、『アベンジャーズ』シリーズで最もアガる瞬間なのではないでしょうか?僕はこれらのシーンだけでご飯が何杯も食べれます。

『アベンジャーズ:エンドゲーム』では、この”ヒーロー集合画”の最上級のものが観れます。一人でサノスに立ち向かおうとするキャップに無線が入り、復活したヒーローたちが大軍勢を率いてサノス軍と対峙します。(ちなみにここに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の宇宙海賊ラベジャーズの一団がよく観るといたのも最高)

キャップが放つ一言。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で悔しくも最後まで言えなかった、「アベンジャーズ・アッセンブル!」。(アベンジャーズの合言葉的なセリフで、アベンジャーズ集合!の意味)

この11年間追いかけ続けたキャラたちが、一つのスクリーンの中に収まっています。各々の思いを胸に、最終決戦へと集まりました。このキャラクターたちの生い立ちや、今そこに立っている理由を考えると涙が止まりません。圧巻のヒーロー大集合

ゲゲゲの鬼太郎妖怪大戦争や、仮面ライダーストロンガーの最終回、「さようなら!栄光の7人ライダー」を観ている人ならばわかるはず。ヒーローたちが手と手を取り合って共通の敵に立ち向かうとういシーケンスは、少年少女達が小さい頃から刷り込まれた無条件で盛り上がることのできる火種なのです。

このシーンだけで何回でも『アベンジャーズ:エンドゲーム』を観れる!たまらない!

喧嘩で勝つわけではない

サノスといえばインフィニティ・ストーンなしでもアベンジャーズを圧倒するその強さ。『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』では、アイアンマン、スパイダーマン、ドクター・ストレンジ、ガーディアンズが束になってかかってもかすり傷ひとつだけでした。

『アベンジャーズ:エンドゲーム』ではそんなサノスとヒーローの総力戦が観れます。サノスは、ひたすら強いのでどう打ち負かすがファンの間で一つの議論になっていましたが、殴り合いで倒して終わりにはならないで…という心配の声もちらほら。

この心配は杞憂でしたね。アベンジャーズは力で勝つわけではありません。インフィニティ・ガントレットの使い方、つまり正義の心を持ってサノスに勝ちます。どういうことかと言うとサノスがインフィニティ・ガントレットを使うのは破滅のため、宇宙をリセットするために使います。大義があれど、やってることは、キャップに言わせれば人の自由を奪う行為です。

しかし、アベンジャーズの面々は『エンドゲーム』のラストでガントレットを使い、消された人々を戻したり、トニーは自らを犠牲にサノス軍を一掃します。こういった、善と悪の力の使い方の違いをしっかりと描いて、物語を大団円で終えたあたり、さすがのMCUです。

トロッコ問題

有名な倫理学の実験で、「トロッコ問題」というものがあります。これは、走行中のトロッコの先に分岐があり、片方に進めば1人を轢いてしまう、もう片方に進めば5人を轢いてしまう。分岐をコントロールするレバーを握っているあなたはどうしますか?という一つのジレンマ的な問題です。

これは前作の『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』で常につきまとっていた問題でもあります。ヴィジョンを殺せば、サノスはガントレットを完成できずに野望を阻止できる。トニーを見殺しにすればストレンジはタイムストーンを渡さなくていい。

この問題にヒーローが立ち向かったときどうするのか?ヒーロー達は、自分を犠牲にします。だからこそ、ヒーローなのです。それはMCUでもずっと語られてきたテーマでもあります。スペースストーンと一緒に氷漬けになったキャプテン・アメリカ。暗黒世界から守るためにドルマムゥと時間のループに囚われる賭けに出たドクター・ストレンジ。核爆弾を自ら宇宙へ運んだアイアンマン。

特に一連のMCUの一人の主人公でもあるキャプテン・アメリカは、自分の人生をも犠牲にし、弱き人々の自由を守るヒーローとして活躍します。トニーは『アベンジャーズ:エンドゲーム』のラストで自らを犠牲に、サノス軍を退けます。(そのあとのペッパーとの最期の別れのシーンで、ペッパーがモーガンという娘もいるのにトニーに「大丈夫よ」しか言わないあたり、すごく強い女性だとやたらと感動しました)

ヒーローとは、自らを犠牲に他人を救う人のことです。それを体現してきた彼らの活躍が見れないとなると、少し寂しいような、安堵したような気持ちにもなります。

まとめ

『アベンジャーズ:エンドゲーム』はこの11年間の集大成にふさわしい映画となっています。まさに、”ファンと駆け抜けた時間”を詰め込んでいて、自分の11年間を思い出すように観れる映画です。

残った謎

 

MCUファンへの感謝の映画としては素晴らしい内容だったのですが、謎も残っています。

トニーの葬儀

トニーの葬儀をキャラクター総出で見守っているとき、見慣れない青年が一人、サムとバッキーの後ろに立っています。あの子こそ『アイアンマン3』でトニーを支えたハーレー・キーナーです。次期アイアンマンとの声も出ている彼が、なんと最期にまさかの出演。期待できますね。

ナターシャとガモーラとヴィジョン

劇中、ナターシャとガモーラとヴィジョンはサノスの指パッチンで消えておらず、実際に死んでしまっています。ヴィジョンはシュリが『インフィニティ・ウォー』で間に合っていれば再生の可能性があるのですが…。ガモーラは過去から来たガモーラが『エンドゲーム』のラストで姿を消しているので、一応復活しましたね。ちなみにこの三名は、各々がスピンオフでドラマ、映画の主演が決まっているため、もしかすると、どこかで復活する可能性もありますね。

タイムマシン

『エンドゲーム』でトニーが開発した手の甲に装着するタイムマシン(のGPS装置)ですが、あれと酷似するものが『デッドプール2』で登場します。ディズニーがデッドプールの配給元、20世紀FOXを買収したこともあり、これは何らかの関わりが今後期待できます。

5年のブランク

サノスの指パッチンで消えた人々を復活できたのですが、劇中ではそれができたのは指パッチンから5年後。スコットが娘に再会すると、娘は成長していたように、ハルクの指パッチンで戻った人々は、残されていた人々と5年の歳の差ができてしまっているのでは…?特にこの影響を受けてしまうのが、高校生でもあるピーター・パーカー。ネッドは同い年っぽかったのですが、MJなどはどうなったんでしょうね…?『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではみんな同い年に見えましたが…。

ソウルストーン

ナターシャやガモーラの死とも関わりがあるのですが、キャップがインフィニティ・ストーンを戻す際、どうやって戻したのかが気になりますね。リアリティ・ストーンはまたジェーンに戻した…?特にソウル・ストーン。キャップはレッドスカルと再会したのですかね?このインフィニティ・ストーンに関しての謎は今後明言されるのでしょうか。

謎は残っているものの、今後も目が離せないMCU。夏には『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が公開され、『エンドゲーム』後の世界が明らかになります。これからも、追えるまで追いかけ続けようと思います!




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with Theaterの支配人です。
7年間大手シネコンで劇場マネージャーを務めたのち、デザイン・マーケティングの仕事を経て独立。今でも映画館の仕事は素敵だと思っています。尊敬する人物はジャッキー・チェン。仕事でトム・クルーズに会った時に緊張し過ぎて顔が白くなった経験あり。