みなさんは「映画館の広告」と聞いて、どんな広告を思い浮かべるでしょうか?
多くの人は、映画の本編上映前にスクリーンで流れる広告を思い浮かべると思います。
この映画本編上映前に流れる広告こそが『シネアド』と呼ばれる、映画館の広告で最も知られている広告です。
企業の広告担当者であれば、一度は「映画館で自社のCMを上映してみたいなぁ」と考えたことがある人も少なくないはずです。
それほど有名な『シネアド』ですが、「どこに問い合わせて、どのように上映まで進めれば良いかわからい…」「名の知れた大企業が使う広告枠だと思ってる」「どんな効果があるかわからない…」など、ネガティブな意見も多いのが事実です。
そこで今日は、映画館広告の代名詞とも言える『シネアド』について、数え切れないほどの企業広告を上映してきた私たちが、改めてその内容について解説していきたいと思います。
『シネアド』とは
前述の通り、『シネアド』とは映画本編の前にスクリーンで上映されるCMのことで、厳密に言えば、ここの広告枠自体を『シネアド』と呼びます。
まずは、この『シネアド』について、もう少し具体的にご紹介していきます。
チケットに記載されている映画の上映開始時間からスタートされる。
『シネアド』について、”映画本編前”と何度かご紹介していますが、実際に上映が始まるのは「チケットに記載されている映画の上映開始時間」です。
この時間が来ると、シアター内が半点灯(少し暗くなる状態)になり、『シネアド』の上映が始まります。
そのあとに、新作映画の予告・注意喚起・先付け予告・盗撮防止などが上映され、映画本編へと進んでいきます。
「上映開始時間から10分くらい遅れても、まだ本編は始まってない」なんて言われているのは、こういった広告や予告の上映があるからです。
ただし、かと言って上映開始時刻を過ぎてから入場するのは、他のお客様の迷惑にもなり兼ねないので、時間には余裕を持って映画館に行くようにしましょう。
『シネアド』の条件。
そんな『シネアド』ですが、具体的に上映するにはいくつかの条件をクリアする必要があります。
この条件は、映画館によって若干変わってきますので、ここでは主流となっている条件についてご紹介します。
- 上映するCMには審査がある。(ギャンブルや年齢制限の必要なものは上映できない)
- 最低2週間(or4週間)以上の上映が必要。
- 「全作品」か「作品指定」でCMを流す対象を指定できる。
- 15秒単位で1枠扱いとなる。(30秒だと2枠分の広告費が発生する)
- 上映順などは劇場側に一任される。(複数企業からの出稿があった場合に順番は指定できない)
主な条件は以上です。
どれも難しい条件ではないので、シネアド上映を考えている方は、頭の片隅においておいてください。
モニター券がもらえる。
これは、あまり知られていないのですが、『シネアド』を実際に上映する企業には、モニター券というものが配られます。(配られない場合もあります)
このモニター券は、出稿した企業が「実際に映画館で上映されているか」「どんな感じで自分の会社のCMが上映されているのか」といったことを確認できるためのチケットのようなものです。
自社のCMが上映されている期間であれば、どの作品でも使えるので、自分の会社のCM上映を確認しがてら好きな映画を観に行くことが出来ます。
もちろん、あくまでビジネス的に確認する為のチケットなので、家族や友人と一緒に映画を観に行った時には使用できません。
『シネアド』の特徴
概要のご紹介を終えたところで、この『シネアド』にはどのような特徴があるか具体的に見ていきましょう。
ここでは、あくまで出稿する企業にとって…というマーケティング的な視点で、特徴をご紹介します。
特徴1.訴求力抜群で最後まで見てもらいやすい
映画を観るために着席し、ノイズのない集中出来る環境で広告の上映が開始されます。シアター内も暗く、お客様はスクリーンを観る以外にやることありません。その訴求力は他の広告枠と比べても抜群です。
また、他の動画広告のように「スキップされる」ということがありません。
たいていのオンライン広告は一定時間の視聴でスキップできたり、TVCMも離席するなどで見ないことが出来ます。
『シネアド』も離席することは可能ですが、めったにこのタイミングで席を立たれる方はいません。
この最後まで見てもらえる強さと、訴求力は他の動画にはない最大の特徴です。
特徴2.近隣のお客様が多く集まる場所で上映できる
首都圏の映画館を除いて、大半の映画館のメイン客層は「近隣住民のみなさま」です。
映画館を中心として、特定のエリアに向けて広告を展開するには『シネアド』は最適な動画広告と言えます。
特定のエリアに店舗を展開するような、地域に根ざしたビジネスを手がける企業にとっては、特定のエリアに向けて一定のリーチが可能なので、自社の商圏に合わせて上手く使うことで集客に繋げることが可能です。
特徴3.他にはないインパクトで印象に残りやすい
映画鑑賞に最適な構造で作られた映画館の大きなスクリーン。
そのスクリーンで、最高の映像クオリティと音響で広告が上映されるので、お客様の記憶にしっかりと残る大きなインパクトがあります。
TVやSNSで見る広告とは比べ物にならない迫力で、お客様の印象に残りやすい動画広告です。
特徴4.幅広い来場客層にリーチできる
言わずもがなですが、映画館にはお子様からシニア層まで年間2億人近くの来場者が足を運びます。
劇場によってメイン層は若干変わりますが、どんな商材でも有意義に『シネアド』を使えることは間違いありません。
また、作品指定をすることで、特定の世代に確実に認知を広めることが可能です。これにより、無駄のない良質な広告展開が見込めます。
特徴5.映画館でCMを上映するという特別感
映画館という特別な空間で上映されるCMです。記憶に残る以上に「映画館で見た」という特別感をお客様に抱いてもらうことが出来ます。
また、映画館でしか見ることができないという特別感と、「映画」という特別なコンテンツも相まって、広告とは言え悪いイメージを持たれにくいという特徴があります。
総じて、他の動画広告に比べて高いブランディング効果が期待でき、複数回の接点を持つことでお客様に良いイメージで商品やブランドを訴求することが出来ます。
特徴6.観るだけで終わらない広告
『シネアド』がお客様と接点を持つのは、間違いなく映画館です。自宅や車の中、職場、旅行先などではなく映画館です。
つまり、広告を観た後に必ず”帰る”という行動が伴います。
そんなお客様が帰り道に寄れるようなところに店舗があったら、他の動画広告より成果に繋がると思いませんか?
それを上手く使っているのが、映画館が入っているショッピングモールやその近隣店舗です。
映画を観終わったあとに、そのまま誘導するのには最適なわけです。特に同じショッピングモール内であれば「映画チケット半券キャンペーン」などで、さらに興味づけをして、確実に店舗への総客数を底上げ出来ます。
『シネアド』の参考費用
ここまでくると、一番気になるのが『シネアド』の費用だと思います。
費用は実際、劇場の規模によって大きく違います。ここでいう規模とは、年間の来場客数です。スクリーン数や座席数ではありません。
具体的にはお問い合わせをして、初めてわかるものなのですが、いくつか参考になる数字をお出しします。
なお、以降の参考費用は【15秒CMを4週間上映/全作品】で上映した場合のものです。
参考1.【日本有数レベル】東京都内有名映画館
- アクセス:東京に来たら誰もが立ち寄るような繁華街。駅から徒歩圏内の映画館。
- 年間動員:230万人
- スクリーン数:9スクリーン
- 参考費用:およそ190万円〜
- 想定リーチ数:18万人程度
参考2.【平日も混雑するレベル】都心からちょっと離れた映画館
- アクセス:東京都内にあり、駅から徒歩圏内に位置するものの、用事がないといかないような場所にある映画館。
- 年間動員:120万人
- スクリーン数:10スクリーン
- 参考費用:およそ90万円〜
- 想定リーチ数:10万人程度
参考3.【土日は混雑するレベル】郊外にある映画館
- アクセス:各都道府県の主な市街地から少し離れた場所にあり、大半のお客様が来るまで来場されるような映画館。
- 年間動員:60万人
- スクリーン数:10スクリーン
- 参考費用:およそ60万円〜
- 想定リーチ数:5万人程度
参考4.【閑散としているレベル】いわゆる地方の映画館
- アクセス:地域のお客様に愛されている、いわゆる地元の映画館。新作が公開された土日でも満席になるようなことはあまりない混雑具合。
- 年間動員:45万人
- スクリーン数:9スクリーン
- 参考費用:およそ35万円〜
- 想定リーチ数:4万人程度
『シネアド』という広告は実際どうなのか。
シネコンというスタイルの映画館が出来てから、広告枠としてまもなく確立された『シネアド』は、以前から企業のみなさんに多くご活用頂いてる広告枠です。
前述の通り、他の動画広告にはない絶対的な特徴を持ち、ビジネスに貢献してきた『シネアド』ですが、実際に出稿する企業とそれを観るお客様はどう思っているのでしょうか?
劇場に寄せられる声と合わせて、少しご紹介します。
『シネアド』をよく利用する企業
- 大手のコンビニチェーン:年間通して利用し、季節に応じて新商品の情報など上映内容を変えている。
- 大手の自動車メーカー:コンビニチェーン同様に、年間通して利用することが多い。
- 作品と関連性の高い企業:これは前述までとは異なりスポットでの利用が多く、映画の主役やキャラの関連商品を取り扱っている場合に利用されます。
- 地元の自動車教習所:どの地域にもある自動車教習所ですが、映画館の客層とターゲットも近いことから、よく利用されます。
- 地元の工務店・ハウスメーカー:教習所と同じく、特定のエリアをターゲットにしていることから、比較的長い期間シネアドを利用されることが多いです。
- 近隣の店舗:「特徴」の部分でも少し触れましたが、シネアドは観るだけで終わらない広告と言われているので、近隣店舗の利用も非常に多いです。
『シネアド』をよく利用される企業を、いくつかご紹介しました。
それぞれの目的は若干異なりますが、大手企業の利用から、地域に特化した企業まで幅広く利用されています。
特定のエリアに向けてリーチ出来るという最大の強みを生かすことを考えると、やはり地元の企業さんにはオススメの広告枠だと言えます。
お客様の声
続いて、それらの出稿された『シネアド』を実際に映画の前に観ているお客様の声を見てみましょう。
映画館で流れる映画とは関係ないCM嫌い。
— 須和野時夫 (@tokio03) June 28, 2016
映画館で流れるテレビと全く同じCM嫌い。オリジナルとか地元限定のは好き。
— むー (@nk_new) August 25, 2018
映画館で映画観ると色んな映画のCMが流れる。それ見るのが面倒だと言う人がいるけど、俺は「うわー映画館来たって感じするな。何かワクワクするな。こんな映画あるのか、次見たいな。」ってドキドキするから好き。同じ人いませんかね。
— ろくろ (@kuroyorinokuro) November 18, 2018
探せばいくつも出てきますが、ここでは代表的なものを3つご紹介しましたが、賛否両論…といった感じですね。
ぼくがいた劇場には「せっかくお金を払って映画を観に来ているのに、なんでTVCMのような広告を観なきゃいけないんだ!」と劇場にクレームが入ったこともありました…。
特に最近は、日常生活に広告がありふれていてユーザー側の”広告嫌い”が増す一方です。
ただ、Twitterから引用したネガティブな感想も含めて、実はここに「シネアドを上手く利用できていない」という問題点が隠されています。
その他、映画館のCMに対して寄せられている意見は、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。合わせてご一読ください。
『シネアド』の上手な使い方
では、実際に企業が『シネアド』を使う際はどのように使うのが効果的なのか。
これまで、数多くのシネアドを見て、かつお客様の声も聞いてきた私たちが思う「シネアドの効果的な使い方」をご紹介します。
上映すること自体が目的ではない。
まずは大前提なのですが、これまでの映画館広告は、スクリーンで上映すること自体に価値があると考えられてきました。
しかし、テクノロジーの進化により「広告」は色々な角度から私たちの日常に溶け込んでいます。その結果、今は多くのユーザーが「広告」自体を煙たがるようになり、企業側からの一方的な押し売りの広告は見向きもされなっています。
いくら前述のような特徴がある広告とは言え、この前提を理解しないまま「●●%増量!」「●●●がお得!」など、一方的なCMを上映しても、思うような成果には繋がらないでしょう。
お客様が観る環境を考慮してCMを作る。
映画館という特別な空間の、とても大きなスクリーンで上映されるCMです。その自社CMの数秒後には、映画のプロたちが作った世界最高クオリティの映像が流れます。
そんなスクリーンで、スマホで撮ったような特別感のないCMや、画像だけで構成されたスライドショーのようなCMが流れたら、観ている人たちはどう思うでしょうか?
ある意味では印象に残るかもしれませんが、決して行動に移すようなCMにはなりません。
いま作っているCMがどんな環境で、どんなお客様が観るのか。しっかり考慮して、シネアドで上映する専用のCMを制作しましょう。
目標を設定してCMを作る。
以前のシネアドのように“上映して終わり”では、せっかく費用を掛けて上映したCMも意味がありません。
CMを見てくれたお客様を確実に次のステップへと誘導出来るように、『シネアド』を単発の施策と捉えず、マーケティングプラン全体を意識したCMを上映しましょう。
『シネアド』は15秒という短い時間で、何を訴求するかが大切です。
CMを制作するとなると、作る側は色々と情報を詰め込みたがりますが、短い時間で伝えられることは1つか2つです。あれもこれも詰め込みすぎた結果、誰の印象にも残らないようなものになる…というのが最悪の結果です。
映画館でCMを観てくれた人をLPに誘導したいのか、直接店舗に来てほしいのか、何かを検索してほしいのか…。そういう行動を促すメッセージを1つでも伝えることで、成果は大きくあ変わってきます。
他のオプションと組み合わせる。
『シネアド』は15秒という短い時間しか、お客様と接点を持てません。いかに優れたマーケティングプランがあっても、さすがにこの短い時間では細部まで伝えられないことも多いです。
そこで、映画館広告の他のオプションも併用することで、接点を持てたお客様にさらに自社の魅力を伝えることが出来ます。
シネアド以外にも、映画館で展開できる広告は以下のようなものがあります。
- 幕間CM上映:シネアドではなく、入退場中に上映される幕間映像にCMを上映します。
- サンプリング:映画館の来場者にチラシや冊子、試供品などを配布します。
- ポスター設置:映画館のロビーにオリジナルで制作したポスターを掲載します。
- ステッカー・チラシ設置:映画館の各所に、オリジナルで制作したチラシやステッカーを掲載します。
- ロビープロモーション:映画館のロビーでプロモーション活動を行います。事前の審査が必要です。
こちらの、その他の広告施策に関しては、こちらの記事で詳しく解説してますので、ご興味のある方はご一読ください。
成果まで見据えて『シネアド』を上手に使いましょう
映画館広告の代名詞である『シネアド』について、詳しく解説してきました。
動画広告に溢れかえっている現在、古くから親しまれている映画館という特別な空間で展開できる唯一無二の動画広告。
広告施策に迷っている方は、ぜひ一度ご検討してみてください。