映画本編の前に必ず上映される「映画の予告編」。
SNSやネット上には、この予告編を長いと感じる方の声も多く見られますが、実はこの予告編の上映には知られざるルールがあります。
予告編が長くなってしまう理由については、こちらの記事で詳しく紹介しています。↓
今日は、そんな”担当者しか知らない予告編のルール”をご紹介。予告編が嫌いだった人も、このルール知るとちょっとだけ予告編に興味が湧くかもしれません。
予告編の長さは時間調整
映画館の1日のスケジュールは、最小でも5分。通常だと10分単位で組まれます。
映画自体の上映時間は、1時間47分…2時間3分…2時間22分…などバラバラです。この端数を、5分や10分というキリの良い単位に調整するために予告編が使われます。
映画の上映開始が「15時17分〜」みたいな半端な時間は見たことないですよね?
上映スケジュールの決まり方を詳しく知りたい方は、こちらの記事もご一読ください。↓
予告編の種類と名称
まずはじめに、「予告編」と一括りに表現されている上映前の映像にはどんな種類があるのかご説明します。
こちらの図を見て頂くと、映画と映画の間の流れがざっくりと理解できると思います。
今回は、こちらの表記した4つの映像について詳しくご説明します。
- 幕間映像
- シネアド
- 予告編
- 先付予告
幕間(まくあい)映像
「まくま」や「あいま」などと呼ばれる部分ですが、正しくは幕間(まくあい)映像です。
ここは、おおよその劇場が「劇場インフォメーション」「避難経路の案内」「鑑賞中のマナー」などの映像をループで流しています。
語弊を恐れず言うと、ここの映像は見ても見なくても良いような内容のものです。割と早めに入場したお客様が、目にする映像です。
この幕間映像は、映画館にデジタルの映写機が導入されたことで流れるようになりました。ループ再生は、さすがにフィルムでは出来ないものですね。
シネアド
この「シネアド」という名前は、初めて聞く方も多いかも知れません。
映画(シネマ)の広告(アド)で、「シネアド」です。つまり広告のことですね。TV番組の間に流れるCMなどと同じようなことです。
劇場が映画以外に収益を上げるために生まれた広告媒体で、ここの枠では大手コンビニチェーンや自動車メーカー、地元の企業などのCMが上映されます。
当然、一般的な広告媒体なので“映画に関係ない”企業の広告も流れます。
この「シネアド」という広告枠が出来てからは、『映画を観に来ているのに、なんでTVCMを見させられなきゃいけないんだ!』みたいなクレームも劇場に寄せられるようになりました…
映画館存続のための収益源です…お気持ちはわかりますが、どうかご理解頂きたいと、どの劇場も思っているはずです。(なにとぞ…)
予告編
ここが、いわゆる「予告編」にあたる部分ですね。
近日公開予定の作品から、「制作決定!」のような特報予告まで、様々な映画の予告が上映されます。
ここは、広告枠ではないので映画に関係ないものが上映されることはありません。
この「予告編」に関しては、このあと詳しくルールを説明していきますね。
先付予告
シアター内の照明が消え、盗撮防止の映像が流れたあと、“本編の寸前”で流れるのが、この「先付(さきづけ)予告」です。
これは、本編を配給している会社からの指定があり、必ず流さなければいけない予告です。
その配給会社が配給する、次の目玉作品になっている場合がほとんどで、劇場の一存では変更できない鉄則がある予告枠です。
予告編のルール
本編の上映までに流れる映像にも、これだけ種類があるので、担当者はこの予告編の編成で意外と手一杯になることもあります。
そんな本編前の映像の種類をご理解頂いたところで、肝心の「予告編のルール」をご紹介しましょう。
公開日の遠い順になっている
上の図に記載した通り、「予告編」の枠内で上映される映画の予告編は、“おおよそ”ではあるものの公開日順に並んでいます。
例えば、この記事を書いている2019年9月現在だと、本編に近い位置には来月か再来月に公開を控えている新作の予告編が上映されます。
逆に、「シネアド」が終わってすぐの位置には来年以降に公開される作品の予告が流れることが多いです。
本編に近い方が認知される
この並び順には、もちろん意味があります。
本編に近い位置で流れる予告編の方が、見た人の記憶に残りやすいから。というのが1番です。
また、予告編を見たくないような人が本編のギリギリで入場してきても、見られる確率が高いので、公開日が近い作品の告知をした方が効果的ですよね?
逆に、公開日が遠い作品は、予告を見ても「すぐ行こう!」とはなりにくいので、本編から遠い位置に配置されることが多いです。
近いジャンルの予告編を編成する
例えば、お子様も多く鑑賞する「ポケモン」の映画の予告編に、ホラー映画のようなグロテスクな表現のある作品の予告編は編成しません。(それこそクレームですね。)
なので、本編のジャンルや客層と近い作品の予告編を中心に編成します。
主演俳優の次の出演作であったり、アクションにはアクションなど、その作品を観に来られたお客様が”次に観に来てほしい”ような作品を中心に編成することが多いですね。
ここは、配給会社は関係なく、ある程度劇場の一存で決められる部分です。邦画には邦画、洋画には洋画、アニメにはアニメの予告が付いてることが多いですよね。
たまに、「エヴァ」とかに「プリキュア」の予告とか付いてて、劇場のセンスを疑う時もありますね…
最後に全体のバランスを見る
この「予告編」も、映画の上映スケジュールと同じで1週間ごとに編成が変わっていきます。
その都度、担当者は作品ごとに予告編を編成し直すわけですが、上記のルールに則りながら編成を考えて、最後に全体のバランスを見ます。
「予告編」とはいえ、配給会社から映像を提供して頂いているので、1つも流さないなんてことは許されません。
正直、ここは劇場側から配給への配慮みたいなところですが、配給が特に力を入れてる作品なんかは多めに編成したりしてましたね。
先付予告は公開日関係なし
最後に補足ですが、上記はあくまで「予告編」の枠内のお話です。
この「予告編」のあとに、「盗撮防止」が流れて、「先付予告」が本編前に流れます。
この「先付予告」は前述の通り、その配給の次回目玉作品なので、公開日順というルールは適応されません。
なので、「予告編」の最後の作品が2019年10月公開予定のもので、「先付予告」の作品は2020年4月公開予定。みたいなこともザラにあります。
最後に
本編上映前の「予告編」について、その種類とルールをご紹介しました。
「シネアド」と「先付予告」以外は、ある程度劇場の一存で決定することが出来るので、劇場によってルールも様々な部分はありますが、おおよそ上記のルールに則っていると思います。
最近、近くの映画館で映画を観た際も、やはりこのルールに則って予告編が編成されていましたね。
『予告編がウザい』『予告編が長い』
こんな声をよく聞きます。
ただ、映画館にとっては大切な収入源です。どんな場所もそうですが、オンライン・オフライン問わず、人が集まる場所にはいずれ広告が入ってきます。
映画館も、このビジネスの流れに乗っているだけです。どうか、ここに対してクレームを付けることなく、受け入れてあげてください。
それでも『広告が嫌いだ!』という方は、どこの映画館もこのルールに則っているかゲーム感覚で楽しんで見てほしいと思います。
こういった広告がなくなると、映画館が閉館してしまう可能性もあります。映画館は地域のみなさまに支えられています。どうか、みなさんの大好きな映画館を支えてあげてください。