細田守監督の最新作、『未来のミライ』についてです。この記事では、『未来のミライ』のレビューを含めて、僕自身が『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム!』から約20年間細田監督の作品を追いかけ続けた過去を振り返ろうと思います。
『未来のミライ』について
まずは映画の概要について。
ストーリー
妹ができたくんちゃん。建築家で自営業の父と、編集者として働く母と、犬のゆっこと一軒家に暮らしていました。妹ができたことで赤ちゃん返りをしてしまうくんちゃん。毎日妹のミライちゃんが優先で、拗ねるように家の庭に逃げるくんちゃんですが、突然周囲の世界が変わって…
割引・入プレ情報
『未来のミライ』の割引情報と入プレ情報です。
前売り券 | あり(ムビチケ) |
サービスデイ等 | 劇場による |
入場者特典 | なし |
入り具合
公開二日目の朝の回を観に行きましたが、中学生くらいの女の子や、子供連れの親が多かった印象。特に子供の笑い声が館内で目立つ感じでした。
細田守監督の今まで
では、まず細田守監督の今までの作品を振り返りましょう。『サマーウォーズ』や『時をかける少女』で有名な監督ですが、他にどういった作品があるのでしょう。幾つかピックアップしてみます。
フィルモグラフィー
- デジモンアドベンチャー(1999年)
- デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム(2000年)
- ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島(2005年)
- 時をかける少女(2006年)
- サマーウォーズ(2009年)
- おおかみこどもの雨と雪(2012年)
- バケモノの子(2012年)
- おジャ魔女どれみドッカ〜ン!40話49話(演出・絵コンテ)
こういった感じです。劇場公開の短編・長編作品を主に挙げましたが、テレビ放送のアニメ作品にも数多く携わっています。
作品の特徴
作画的な特徴で言えば、顔に影のない平たい顔や、笑顔などで極端にデフォルメされることが特徴です。原作・脚本も担当している場合は、多くが獣人(獣と人の混合)が取り扱われます。そのことで「ケモナーである」とよくネットなどで言われていますが、お子さんができたことで、子供の成長と動物の関わりを意識しての演出のようです。
日本を代表するアニメーター
細田監督については多くを語らずとも、知っている方は多いかと思います。新海誠監督、片渕須直監督と並ぶ、オリジナルアニメーション監督として宮崎駿引退後に日本を牽引するアニメ映画監督となっています。
レビューと超個人的な感想※ネタバレあり
では、『未来のミライ』についての感想です。物語に触れる内容がありますので、鑑賞後に読むことをお勧めします。
個人的には全然楽しめなかった
いきなり辛辣で申し訳ないのですが、個人的には全くもって楽しめなかったです。お寒いジョーク(鬼婆の件)、芯の無い物語、キャラクターの魅力、どれをとっても過去作と比べて全く感情が動かされませんでした。
例えるのであれば、ファミレスに行って、隣の家族連れの子供が大声で騒いでいるのをずっと見せられているような気分になってしまいました。細田監督のアニメ映画は、僕が小学生の時からずっと見続けているという変な隣人感があるので、なぜ楽しめなかったかを下記に書いていきます。
子どもがいないとわからない
細田守監督といえば、おジャ魔女どれみやデジモンなどの子供向けアニメなのに熱い展開や感動の展開の作品が多く作られてきました。
しかし、監督本人にお子さんができて以来、親目線のアニメ映画が増えてきました。『おおかみこどもの雨と雪』や『バケモノの子』などが典型的です。
しかしこれらの作品、実際にお子さんがいらっしゃる観客でないとなかなか共感できないようになっています。僕みたいな独身者には、なかなか伝わりにくい内容でした。
普遍性に欠ける
「わからない」からと言って「面白く無い」と決めつけるわけではありません。例えば、ピクサーの『インサイド・ヘッド』は監督のピート・ドクターが自分の娘の感情の変化などから影響を受けて作りました。『未来のミライ』などの細田守監督と同じく、子育てというごくごく個人的なことから生まれているのです。
しかし『インサイド・ヘッド』は万人が感動できる映画になっていました。なぜなら、子育ての中にある悩みを、「辛い時は誰かがそっと手を差し伸べる」と言う普遍的なテーマで物語っていたからなのです。
『未来のミライ』には、そういう芯のようなテーマが見受けられませんでした。ラストの方で、家族過去現在未来は全ては繋がっていると言うことが語られていましたが、それは特に問題提起でも無く、当たり前のことを当たり前に言っているだけなのでした。
『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム』が観たい
『未来のミライ』は、子育て中の親や、妹や弟ができたこどもに向けた“絵本”としては上等だと思います。実際に劇場ではこどもの笑い声が何度か響いていました。
でも、僕が観たかった細田守監督の映画は『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム』のような映画だったのです。当時はもちろん東映アニメフェアのこども向け作品として作られていましたが、今観直してもかなり楽しめる内容です。
細田守監督自身も、私生活の変化などで作家性は変わってきています。「こども向けアニメ」を作っていることには変わりはありませんが、この「こども向けアニメ」に親の視点が入り込んでいるのが最近の細田守監督の作品だと思います。
『デジモンアドベンチャー/ぼくらのウォーゲーム』では主人公の太一や光子郎と一緒になってオメガモンを応援できました。それは細田守監督自身が一番近い人物だったからかもしれません。実際に太一の母は息子の奮闘に一切介入しませんでした。
これは逆に僕が置いてけぼりをくらっているだけかもしれません。細田守監督との約20年間で、その作品群と少しずつ距離を置くようになってきました。男女のごちゃごちゃを描いている新海誠監督の作品はいつでも楽しめてしまいますが…(笑)
まとめ
『未来のミライ』についてのレビューですが、かなり偏った個人的な感想になってしまっています。ただこれは、青春も社会のことも知り始めた約20年間と言う僕自身の人生の側にいつも細田守監督の作品があったということです。
一緒に育ってきたつもりが、気がつけば少し距離ができていた。観終わった後に「つまんね!」と言うより、少し嬉しいような悲しい気持ちになりました。これからの細田守監督の作品との未来は、寂しいけどもう前のようにはいかないかも知れません。