連載企画「見逃シアター」では、僕が見逃してしまった劇場公開作品を、DVDリリースや配信開始に合わせて鑑賞し、感想を書いていくコーナーです。レンタルショップで借りる映画に悩んだ時、動画配信サイトで気になった時、ちょっと参考にしてもらえれば幸いです。
今回は2017年に公開され、アカデミー賞にもノミネートされた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の見逃し感想を書いていきたいと思います。僕はこの映画に対して、とても鬼太郎的だな、と感じました。それも80’sのアニメ版。そんなことに触れながら、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の見逃シアター、始まります。
はじめに
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が日本公開された2017年11月、公開規模も小さく、僕もなかなか観に行けずに途方にくれていました。先日、ようやくレンタルショップでDVDがリリースされているのを知って、即買い。
現在はDVD/BD、ツタヤなどのレンタルショップ、動画配信はU-NEXTで31日間無料で視聴できます。(※2018年7月30日現在)では『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の感想、いってみたいと思います。
非現実で物語る大切さ
まずはその作風についてです。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』感想総まとめ
とても楽しめました!ストップモーションアニメとは思えない作り、口先だけではない日本に関するリサーチ。どれを取っても遜色ない映画です。アカデミー長編アニメーション部門は受賞できませんでしたが、素晴らしい内容です。
特に、鬼太郎好きの僕は凄く楽しめました。典型的なヒーローズジャーニーでありながら、日本の死生観や幽霊に関しての物語。大好物です。
アニメーションと現実の狭間
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はストップモーションアニメでできていて、この作り自体はもうそこら中で語られているので割愛しますが、とんでもない労力と時間をかけて作ったアニメーションです。
何万通りとあるキャラクターの顔の表情を一つ一つ変えて撮影する。通常のアニメも一コマ一コマ描きあげていくのですが、それを実際の造形物でやるということがストップモーションアニメの凄いところです。
アニメーションというのは、もちろん荒唐無稽のものもありますが、一旦現実の外で出来たものから、なんとか現実に寄せていこうとするものです。
例えばキャラクターの顔。感情表現というリアリティあることを、表情豊かに描く。現実の中でリアリティを描くのではなく、現実の外でリアリティを描くわけです。
これには凄く意味があって、一旦現実の外に出て、自分だったらこういう時にどういう動作をするか、どんな顔をするかと客観的に、アニメーションと現実の狭間で見直すのです。それは、観ている側も同じことを感じるので、感じ方によっては実写よりも物語やテーマに没入することができます。
物語の豊かさ
そういった手法で描かれた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は、中身もとても豊かでした。
日本だけではない
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』には、かぐや姫や三種の神器といった日本神話や古典が多く取り扱われています。監督のトラヴィス・ナイトが日本に住んでいたこともありその影響を色濃く受けているのですが、何もそういった神話や古典は日本だけにあるものではなく、世界中に散見されるものなので、「日本には海外に影響を与えるポテンシャルがある!」なんて最近の日本万歳のテレビ番組みたいに言うつもりはありません。
つまり、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で扱われている日本の古典的な物語含め、世界中にある物語というのは、劇中でもクボが物語を語っていたように、時を経て誰かに語られることが豊かさの一つであって、その物語が誰かを救うこともあるということが重要なのだと思います。
ただ、語られる物語が上等というわけではなく、世界中には語られない物語も無数にありますし、そういったコマとコマの間のような瞬間こそが生へと通じるとも思います。
鬼太郎的な作品
僕が『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観たときまず思ったのが、「これ鬼太郎じゃん」でした。
片目のない鬼太郎とクボ
その共通点を上げていくと、クボも鬼太郎も片目がありません。つまり半分の目でこの世界を見ているわけです。しかも鬼太郎は半分人間半分妖怪の半妖怪。クボも月の帝の娘と侍という人間のハーフ
しかも劇中、クボの肩には常に親父さんが乗っています。鬼太郎は言わずもがな、目玉の親父が頭に隠れていますね。しかも”亡き母親のために旅に出る”というのが、これまたアニメ版鬼太郎80’sの地獄編にそっくりなのですね。
もしかしたら、トラヴィス・ナイト監督や脚本のクリス・バトラーは鬼太郎を観たことあるんじゃないかなと思います。
“見えないものを信じる”
しかも、作品の作りが似ているだけでなく、そのテーマ的なところも似ていると感じました。鬼太郎の生みの親水木しげる先生は、”見えないものを信じる”ことが大切だとモットーを抱いていました。『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のクボも同様に、物語という形のないものを信じ、幽霊という目に見えないものを信じ、救われます。
ちょっと宗教のように聞こえてしまいそうですが、見えないものを信じるというのは人の想像力を刺激したり、金や物に囚われない価値観に繋がるから、僕は大切だと思います。鬼太郎みたいに、タバコ吸いながら一日中ゴロゴロしたいです。
まとめ
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』ですが、子供の頃に観た鬼太郎と重なり、さらにその作りから、とても好きな作品になりました。映画館で観たかった!
あと本作を監督したトラヴィス・ナイト監督ですが、『トランスフォーマー』シリーズのスピンオフ、『バンブルビー』の監督をするようですね!こっちも楽しみ!