多くの方が、映画館の収益は映画の動員(チケットで売上)、または売店の売上で成り立っていると思っているはずです。
しかし、現実は全く違います。
1本の映画というのは、制作会社があって、配給会社があって…と、制作から興行までに複数社が関わっているものです。映画館が自分たちで映画を作っているのであれば話は別ですが、複数社が関わるということはその分利益が上げにくい構造になっています。
身近なものに置き換えると…あるメーカーの商品を、問屋を挟んで販売店が扱っているようなものです。
では、映画館はどのようにして利益を上げ、あの大きな施設を日々運営しているのでしょうか。
今日は、映画館に勤めたことのある人しか知らない”映画館の収入源”をこっそり公開していきます。
物販での利益
まずはみなさんがご想像されている物販について。
映画館での物販は、ポップコーンやドリンクなどを販売する『コンセッション(売店)』と、映画関連グッズやパンフレットを販売する『グッズ売場』の2種類があります。
コンセッション
みなさんが映画鑑賞中に食べるポップコーンやドリンク、これらの売上はもちろん映画館の利益です。
ネット上の情報や噂で言われている通り、ここでの利益が映画館を支えると言われるほど、コンセッションの利益は大きな収入源です。
いわゆるレストランやカフェと同じような構造になっていて、仕入れ業者から材料を仕入れ、調理・加工して販売しています。
つまり、原価以外は利益という一般的なビジネスモデルが成り立っているわけです。
ただし、いくら映画にお客さんが入ってもコンセッションを利用してくれなければ意味がありません。その為に、映画館ではコンセッションの利用率を上げる為の様々な施策を展開しているわけです。
ちなみに、意外と売店のメニューは自由度が高く、地域柄を活かした特別な商品を販売したりすることが可能です。もちろん、本部などの許可は必要ですが、担当するマネージャーの動きと工夫で売上も変わってきます。
グッズ売場
グッズ売場も通常の雑貨屋さんやおもちゃ屋さんと同じような構造になっていて、メーカーから商品を仕入れて販売しています。
大半の商品は「委託販売」ですが、一部「買取商品」も含まれていたりするので、担当のマネージャーは動員予想から仕入れる商品の種類と数をを決めます。
ちなみに、構造自体は一般的な店舗と同じですが、グッズ売場で販売する商品の利益率は低いです。
当時はそれほど気にしていませんでしたが、今思うと利益薄かったなぁ…と思います。
なので、グッズ売場で品切れを起こしてしまっても大きな問題にはなりませんが、コンセッションで品切れを起こすと支配人や上司に怒られるんでしょうね…
ロビー活動での利益
続いては、目にはしてるけど気にかけた事はないであろう、ロビー活動での利益です。
活動する内容は様々ですが、いくつかのパターンが決まっているので、ご紹介します。
ロビープロモーション
まずロビー活動と聞いて、誰もが思いつくのがこれでしょう。
映画館のロビーに長机などを出して、クレジットカード等の入会案内をしているようなアレです。
クレジットカードの種類によっては、入会すると映画のチケットに対する割引などが受けれたりするので、そういった謳い文句で勧誘していますね。
もちろん、これらは映画館スタッフが案内しているものではなく、映画館が場所を有料で企業に貸し出し、その借りた側のが行っている活動で、この場所を貸し出した時点で映画館は収入が得られます。
映画館という、たくさん人が集まる絶好の場所を貸し出すわけですから当然ですね。
サンプリング
最近は少し減ってきているかもしれませんが、一時期は毎週のように依頼があったサンプリング。
チケット窓口や入場口で、スタッフからチラシや冊子などを手渡された経験ありませんか?
あれが、サンプリングと呼ばれるもので、近隣企業からの依頼でイベントのご案内を渡したり、新商品の案内などを手配りで配布します。
急に渡されるので、不思議そうに見ているお客さんが大半ですが、それでも認知拡大にはもってこいです。
これも配布する数量などによって、映画館が収入を得ます。
実際にスタッフが手渡しで渡すパターン以外にも、チラシラックに置いたり、ポスターを掲載しているのもこの類です。
ステッカーなどの掲示
トイレの鏡などに、なんらかの告知ステッカーが貼られているのを見た事ありませんか?
これは少し珍しいもので、ぼくも何度かしか経験したことありませんが、稀にこういったステッカーを受け付けることがあります。
映画館のトイレの鏡の枚数なんて知れているので、これは恐らく1つの劇場だけでなく、全国展開するような企業からの案件で、系列の映画館が一斉に取り組むものと思います。
映画館からすれば、これらの”いわゆる場所貸し”のような収入は、日常の営業をしているだけで上げれる利益なので嬉しいものです。
ちなみに、こういった依頼主の企業がいる案件の場合、渡し忘れや掲示漏れなどの失敗は許されないので日々、スタッフにも共有し抜け・漏れがないように取り組んでいます。この辺りも含めて報酬を頂いているのです。
シアター内での利益
最後に、シアター内で上げられる映画館の利益についてです。
ここでは、もちろん通常の映画上映以外の事柄をご紹介します。
シネアド
まずは、誰もがご存知のシネアドです。
映画の上映前(厳密には映画予告の前)に流れる、一般企業のCMです。
「なんで映画を観に来てるのに、普通のCM見なきゃならないんだ!」というご意見は、恐らく全国のどの劇場でも1度はあったことでしょう。
しかし、そうやって利益を上げないと辛い劇場があるということも、どうかご理解頂きたいです。
なお、このシネアドは上映する長さはもちろん、上映するタイミングによっても金額が変わります。
映画本編に近ければ近いほど高い…という理屈ですね。
貸館
ここ数年で一気に世の中の主流になった、スペースのシェア。映画館も例に漏れず、スペースを貸し出しています。
映画館を貸し出しているのは、もちろんシアターです。大きなスクリーンのある空間を、自由に使えるという贅沢な空間です。
自主制作映画の試写会や上映会、大人数でのMTG・プレゼンテーション、ゲームなどでも使えるので、デジタル化したシアターは意外と幅広く使えます。
とはいえ、やはり一番多いのは「映画祭」や「特別上映」的な上映付きイベントで使用されることです。
せっかく映画館を借りてるのに、大きなスクリーンを使わないのはもったいないですもんね…
上映前or後のイベント
これは少し珍しいパターンですが、ご紹介しておきます。
映画の上映前か上映後に、スクリーンの前にMCのような人が出てきて商品のPRなどを行うものです。
ぼくの長い映画館人生の中でも、これを実際に見たのは2回だけです。どちらとも、作品の関係があるので配給と密に連携している案件でした。
これが企業案件と呼べるかは不明ですが、例えば同じ配給の作品の上映後に、次の超大作の告知をイベント的に行うなどでした。
これに出会えた方はラッキーです!あまり見られるものではありませんよ!(たぶん)
最後に
映画館が利益を上げられるポイントをご紹介してきました。
どれも、ご来場されるお客様からしたら、あまり関係のない事かもしれません…場合によっては、迷惑と感じる事であるかもしれません。
しかし、映画館にとっては生命線とも言える大切な収入源です。
最近は特に地方の映画館は経営が厳しいと聞きます。様々な要因はあると思いますが、1人でも多くのお客様がこれを知っておいて頂けることで、少しは変わるのではないかと思っています。
間違っても外で買ったものを持ち込むようなことなやめてください。ドリンク1杯でも良いです。売店をご利用ください。
みなさんの地域の映画館を守るために、ご協力出来る範囲で映画館に協力してあげてください。