皆さんは、映画館で盲導犬を連れたお客様を見かけたことはありますか?
よく映画館を利用するという方でも、盲導犬を連れたお客様を見かける機会はあまりないかもしれません…。
実際に映画館で働いていても、盲導犬を連れたお客様がご来場されるのは年に1・2回あるかないかというところ。当然ながら、映画館は盲導犬を連れたお客様も利用できる施設の1つです。
そこで今回は、意外と知らない「盲導犬を連れての映画館鑑賞」の裏側や映画館側の対応などについてご紹介します。
盲導犬を連れて映画館を利用できる?
結論からお伝えすると、特別な訓練を受けた盲導犬は、あらゆる店舗・施設をいつでも利用することができます。
そして、「映画館」も盲導犬が利用できる施設の1つです。
Q6 補助犬は、どんなお店にも入れるのですか?
公共施設、電車・バス・タクシーなどの乗り物、私達が普段利用する様々な店舗(コンビニ・スーパー・デパート・映画館・病院など)を予約なしでいつでも利用できます。
なお、盲導犬を連れたお客様は、特別な許可や事前予約なしに映画館へ立ち入り、映画を鑑賞することが可能です。
ただし、周りのお客様の中に犬アレルギーをお持ちの方が居た場合などは、双方のお客様にとってご理解いただける形で対応することが望まれます。
盲導犬を連れたお客様が来場した際の対応
次に、盲導犬を連れたお客様が来場した際、映画館側がどのように対応しているのかをご紹介したいと思います。
1.入場時の対応
盲導犬を連れたお客様が来場したら、何かお手伝いできることがあるかどうかお声がけをします。
その後、トイレや劇場内の段差に関する情報などをお伝えし、盲導犬を連れたお客様を座席までご誘導します。
また、盲導犬を連れたお客様を劇場内にご案内する際は、念のため周りのお客様にもしっかりと配慮をします。
犬アレルギーをお持ちのお客様がいた場合には席を変更したり、怖がってしまうお子様がいる場合は双方納得のいく形をご提案します。
どうしても、やむを得ない場合は次の上映回を提案するといった対応を取ることもあります。
2.上映中の対応
映画の上映中、盲導犬はお客様の足下でおとなしく伏せています。
そのため、必要でない限り特別な対応をすることはありません。
3.退場時の対応
お客様の状態にもよりますが、映画の上映が終わったら、足元の安全を確認しながらお客様を出口まで誘導します。
これも基本的には盲導犬が先導して退場されますので、劇場側でお手伝いするケースは少ないです。
しかし、入場を拒否されてしまったケースも…
ここまでで、盲導犬を連れたお客様に対する映画館側の対応をご紹介しました。
このような流れでトラブルなく入場していただくことが理想なのですが、実際には盲導犬ユーザーが入場を拒否されてしまったケースも存在します…。
日本盲導犬協会の公式ホームページには、映画館での次のような事例が掲載されています。
映画チケットを事前購入し、入場受付へ行ったところ、スタッフに「他のお客様へ確認します」と止められ、結果「お客様の中にアレルギーの方がいるため入場できません」と断られた。
映画館のチケットを事前購入していたのにもかかわらず、犬アレルギーのお客様が居たことから入場を断られてしまったという事例です。
「なぜ盲導犬の受け入れが義務でありながら、このような対応になってしまったの?」と疑問に感じる方は少なくないと思います。
ここからは、対応する劇場側の実情も踏まえて、その裏側をご紹介します。
映画館側の対応が不十分なこともある
前述の事例で見ていただいたように、盲導犬を連れたお客様に対して映画館側の対応が不十分なことが正直ゼロではありません。
ほとんどの映画館にとって、盲導犬を連れたお客様が来場するのは年に1回あるかないかの珍しいことです。
また、映画館側はすべてのお客様に平等に配慮する必要があります。
盲導犬を連れたお客様に配慮が必要なように、他のお客様に犬アレルギーをお持ちの方がいないかどうかといったことも、当然ながら考えなければなりません。
このような理由から、映画館側の対応が不十分になってしまうことがあります…。
ただし、盲導犬が十分な訓練を受けていることから、映画鑑賞に問題ないことを映画館側はしっかりと理解しています。
ご迷惑をかけてしまうこともありますが、中立な立場ですべてのお客様の事情を伺った上で、双方へ配慮した適切な対応を取れるように務めております。ご理解いただけると幸いです。
盲導犬を連れて映画鑑賞へ行かれるお客様へ
このような理由から映画館側の対応に不満を抱いてしまったお客様もいらっしゃると思います。
映画館によって、また対応するスタッフの経験によって、ご迷惑をお掛けしてしまって申し訳なく思います。
ただ、どうしても”多くのお客様にとって快適な環境”を作ることを意識してしまうので、少し広い目で見て頂けると幸いです。
また、もしご都合が許すのであれば、劇場が混み合わない平日に行かれることをオススメします。
劇場の運営自体に余裕があるので、しっかりと間違いのない対応をしてくれやすいですし、前述の”他のお客様のアレルギー”などに影響されにくいからです。
劇場側の視点で恐縮ですが、少しでもご理解頂けたら幸いです。
「ユニバーサルシアター」というのもある
東京都北区の田端には、日本初のユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」があります。
ユニバーサルシアターとは、目の不自由な人や耳の不自由な人など、どんな人でも一緒に映画を楽しめる映画館のことです。
目の不自由な人も、耳の不自由な人も、車いすの人も、小さなお子様連れの人も、だれもがいつでも安心して、一緒に映画を楽しむことができる、すべてのお客様を対象とした映画館、それが、ユニバーサルシアターです。
引用:チュプキについて
シネマ・チュプキ・タバタは、たくさんの人々の募金によって、2016年9月にオープンしました。
館内がバリアフリー設計になっている他、照明・音量が調節可能な完全防音の個室、バリアフリー字幕、イヤホン音声ガイドなどを完備しています。
そして、館内はすべてのお客様がリラックスできる居心地の良い空間となっています。少しでも興味を持った方は、ぜひ足を運んでみてください。
おわりに…
今回は、盲導犬を連れての映画館鑑賞や映画館側の対応についてご紹介しました。
盲導犬は、原則すべての映画館を特別な許可なしに利用することができます。
上でもお伝えしたように、映画館側の対応が不十分なこともゼロではありませんが、ご理解いただけると幸いです。
もし映画館で盲導犬を連れたお客様を見かけた際には、優しく見守りましょう。犬アレルギーをお持ちの方は、映画館スタッフに相談してくださいね。
すべてのお客様が快適に楽しく映画を楽しめることを願っています。
最後になりましたが、車椅子での映画鑑賞方法についても、こちらの記事で詳しくご紹介しています。合わせてご一読ください。