今や全てデジタルで映画を上映する時代。けど少し時を遡ると映画一本一本をフィルムで上映していました。
もうフィルムでの上映自体はほとんどなくなってしまっているのですが、フィルム上映に携わっていた筆者がフィルム上映の仕事についてお話しします!
映写室について
普段映画を観ている時に、観客席の後ろにある「小窓」を見たことがありますでしょうか…?あの向こうが、所謂「映写室」になっているのです。
映画館の心臓部
映写室は映画館の心臓分と言っても過言ではありません。
映画を上映するのが映画館で、その「上映」という作業を実質行っているのが映写室です。恐ろしい話この映写室が止まってしまうと、映画を観ることができなくなってしまいます。
最近は無人に
一昔前の映写室は、フィルムで上映していたのでシネコンであろうとミニシアターであろうと数人のスタッフが働いていました。
しかし、デジタル化の波により、今や映写室で働くスタッフはほとんどいません。
デジタルでの上映は、上映時刻など全て自動で管理できるため、一度電源を入れるとあとは勝手に上映がスタートします。
昔を懐かしむ意味でも、映写室がまだ人の熱気とフィルムの音に溢れていた時代を紹介します。
フィルム上映時の映写スタッフの業務
フィルムで映画を上映していた時、映写スタッフはどういった業務をしていたのでしょうか?
基本はアルバイトスタッフ
映画を上映する職業のことを、「映写技師」と呼んでいました。今や日本にも数人しかいないのですが、上映に携わる方達です。
特別な資格などは必要なく、特にシネコンなどの映画館ではアルバイトスタッフが映写技師として映画を上映していました。
映画館内のスタッフ図としては、映写室を統括する正社員であるマネージャーがいて、その下でアルバイトスタッフである映写スタッフが上映などの実作業を行なっている、という感じです。
その①:映画の上映
映写スタッフの主な業務は、映画の上映作業でした。
人の身長ほどある映写機に、丁寧にフィルムをかけていき、定刻に上映を開始します。
映画のフィルムはとても一人では持てないくらい大きく、軽トラの荷台にやっと置けるくらいの大きさで、映画一本分となっています。
その②:予告の編集
映画館で流れる映画には、必ず予告編がついています。
デジタル上映の今は、映写機で直接データを編集して予告編集を行いますが、フィルム上映の時は一から「予告編」のフィルムを繋ぎ合わせて、本編のフィルムとくっつけます。
このカットの作業に「スプライサー」と呼ばれる器具を使ったり、机一つ分の大きさの「編集台」というものがありました。
ちなみにフィルムをくっつけるのは、シンプルに透明のテープでカットした部分を繋ぎ合わせるだけになります。
その③:上映中作品の確認
映画の上映や予告編集の合間を縫って、上映中作品が正常に上映されているか確認を行います。
映写機の横に置かれたこれも人の身長ほどあるアンプの棚から正常に音が出ているか確認し、映写機がおかしな動きをしてないか確認、さらに一番大切なフィルムが傷つくような挙動をしていなかなど、結構神経を使います。
これらが主に映写室での映写スタッフのフィルム上映時の業務です。
映写の仕事の特徴
僕が映写スタッフとして働いていたころ、働く前は映画館といえば接客業…と考えていましたが、全く真逆のお仕事でした。
朝は早く、夜は遅い
映写スタッフは、他のセクションのスタッフよりも勤務時間は長くなります。
映画上映前のチェックが不可欠のため、朝は社員と同じくらいの時間に出勤します。
また、フィルム上映時は「試写業務」を全編通して観る必要があり、これは上映が全て終了してからでないとできないため、夜は遅くなることが多々ありました。
試写業務が無い場合でも、最終上映が終わりフィルムが巻き切られた後も、次の日の上映スケジュールに合わせて準備を行うため、通常でも他のセクションスタッフよりも遅い時間に業務終了となります。
暗室でスタッフだけ…
映画館といえばチケットやポップコーン販売で接客接客…というイメージをお持ちの方が多いかと思います。
しかし映写スタッフに関しては、裏方の仕事であるため、基本薄暗い映写室でスタッフだけとなっております。
僕が働いていたシネコンの映写室では、各々のロッカーや作業台、個人個人の道具などに映写スタッフの個性が出ていて、まるで部室のような感じでした。
あと当然ですが、人がいなくなった夜はちょっと怖いです…。
職人っぽさが凄い
僕がいた映画館での偏った意見になってしまいますが、映写スタッフは基本的に職人気質な人が多かったです。
アルバイト歴も長く、歳も結構いっている人が多く、当時大学生の僕からすれば所謂「変人」だらけに写っていました。
それもそのはず、映写スタッフというのは他のセクションスタッフとの関わりがほとんどなく、暗室で黙々と作業を繰り返すからなんですね…。
まとめ
フィルム上映の時の映写スタッフ、というのは本当に貴重な経験で、今後なくなることが確定してしまっている職業です。
映画館にそんな職があったんだ…という興味を少しでも持ってもらえたら光栄です。